いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

ありがとうズッコケ三人組

「お、札束くれんの?w」

たしかあれは、小一か小二の時の誕生日会だったと思う。

帰り際、友だちのオダ君がくれた包装されたプレゼントの形、大きさを見て、すぐに類推したのが札束だったという想像力は子どもとしてどうなんだとは思うが、もちろん包装紙を開けてみてそこにあったのが札束というわけはなく、あったのは黄色いカバーがかかった『それいけズッコケ三人組』の文庫版だった。

Z1それいけズッコケ三人組 (ポプラ社文庫 A 145)

わかってはいたものの、札束でなかったことに少し気落ちしながら、文庫をペラペラめくっていたぼくは、気がついたら寝る間も惜しんで夢中になって読みまくっていた。

 

知っている人も多いと思うが、『ズッコケ三人組』シリーズは、中国地方の架空の県、稲穂県を舞台に、直情型のハチベエ、博識でクールなハカセ、のんびりしたモーちゃんの小学六年生の三人が活躍する、那須正幹先生による児童文学だ。

さまざまなシチュエーションで巻き起こる、キャラクターの違う三人の掛け合いがたまらなく好きだった。児童文学だからといって、子どもじみているわけでも、大人すぎるわけでもない。子どもが背伸びしてやっと届きそうな、絶妙な距離の場所で描かれる、三人の冒険に胸を躍らせた。稲穂県のモデルが、那須先生の出身地であり、ぼくの地元・広島県であったのも、とっつきやすさに与していたのかもしれない。

 

三人は、それまで自分からはろくに本など開かなかったぼくを夢中にさせた。

親も、漫画でなく本ならば、と一冊を読み終えればポンポン次の作品を買い与えてくれた。家の本棚には、いつの間にか読み終えた文庫本がずらり。不恰好にも途中で文庫本から少し大きめのハードカバーに代わるのは、文庫としてまだ出版されていない新しめの作品にまで届いてしまったからだ。それぐらい、あっという間に読んでいってしまった。

 

ズッコケ三人組』の影響を受けて、自分で絵本を描いて、あろうことか小学校のクラスで担任教師に読み聞かせしてもらったこともある。凄まじい自己顕示欲である。タイトルは『ぼくたちの冒険』。「ぼく」が主人公で、友だち2人と冒険に出かけるストーリーで、もちろん「三人」なのは、「ズッコケ」にインスパイアされていたことは隠すことはできない。

ちなみにこの話には、「デビュー作」が概ね好評だったため、クラスメイトからの「自作に俺も出してくれ」という「出演依頼」が殺到し、断りきれずに「三人」というコンセプトは崩壊してしまった、という後日談が付いてくる。

 

大袈裟でも言い過ぎでもなんでもなく、ぼくを小説の世界に招待してくれたのは、『ズッコケ三人組』に他ならない。那須正幹先生、ありがとうございました。