いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ハドソン川の奇跡

2009年1月15日、米ニューヨーク発のUSエアウェイズ1549便がバードストライク(鳥の衝突)に遭遇し、両翼エンジンの機能が停止。ニューヨークを流れるハドソン川に不時着水した顛末を描く一作。トム・ハンクス主演で、クリント・イーストウッド監督の最新作です。なんでも、実際に乗客乗員の救助にあたった隊員らが多数出演しているそうで、リアリズムを追求したとのこと。

奇想天外な方法で全155人の乗客乗員の命を救い、一躍英雄となったチェズレイ・サレンバーガー機長、通称サニー。ところが国家運輸安全委員会(NTSB)から、その「墜落」が無謀な行いであり、機長には155人の命を危険にさらした不届き者の疑いがかけられてしまう。

焦点は両翼のエンジンが本当に故障していたのか、そして、本当に空港に着陸することはできなかったのか、です。どこまで事実かわかりませんが、この疑いが本当だとしたらあんまりです。155人も無事に救ったんですから、それでいいじゃないかと思うわけですが、どうもお役所というのはそうはいかないもののようで。

自分の判断は本当に正しかったのかどうか。幾度となく浴びせられる追及に、サニーさんは次第に自分の技術と判断に自信を失いかけてしまう。

構成は巧みで、不時着の回想シーンは3度繰り返して描かれますが、肝心となるサニーさんと副機長の不時着前のやり取りは3回目の回想まであかされません。そして、サニーさんが自身の技術、判断に対してゆるぎない自信を取り戻すシーンで、ついに真相が明かされるのです。

イーストウッドの手腕は相変わらずで、落ち着いた展開、あっさりした演出は、観ていて安心できます。上映時間が約90分なのもいいですね。この手の感動秘話ものはダラダラダラダラ長引き、スクリーン上の登場人物が涙でぐちょぐちょになっている反面、観客の目が死ぬ場合もあると思うんですが、タイトにさえられているのがいい。そのくせ、エンドロールでは憎い演出も待っている。

名人芸と言いたくなる手腕なのに、それをことさら騒ぎ立てるような派手さもない風格。サニーさんは不時着成功後に「訓練してきたことをやっただけ。自慢も感動もない」と語ったそうですが、まさに本作自体、その言葉が当てはまるかのようです。