いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ダーク・プレイス


われらが大隊長フュリオサさん(シャーリーズ・セロン)とウォーボーイズのニュークスさん(ニコラス・ホルト)が、再度タッグを組んだ一作。原作が「ゴーンガール」のギリアム・フリンということでも話題です。

セロンが演じるヒロインは、30年前にカンザスシティの片田舎で起きた一家惨殺事件でただ一人生き残った娘です。

全編、金に汚い人ばかりが出てくる映画で、イヤーな気分になれます。こういうのをみると、凶悪犯罪はやはり貧困によるところが大きいことが実感させられる。ヒロインも、家族を殺されたかわいそうな立場ではありますが、今では集まる寄付金だけを頼りにするプー太郎(そんなことってありえるの?)です。彼女が興味のない事件の真犯人を追うことになったのも、寄付が減って暮らしに困ったからなのですから、まあ酷い女です。

事件ではヒロインの実兄のベンが逮捕され、彼はすでに28年も収監されている。久しぶりの妹との面会で、彼は自分が犯人ではないといいますが、ことの真相についてはなぜか口を閉ざします。そんな彼を演じているのは、「ハウス・オブ・カード」でルッソ議員を演じた若禿、もといコリー・ストールです。ルッソもそうですが、彼はどこか心の弱さに付け込まれる役がとても似合います。

映画は、ヒロインたちが捜査する現代と、事件が起きた1985年当時を行き来しながら展開していきます。そんな85年当時の場面で出てくるのが、われらがクロエ・グレース=モレッツちゃん。ベンの彼女として登場しますが、悪魔崇拝の童貞キラーというこれまでにないエキセントリックな役柄であることは間違いありません。ただ、これはあまり掘り下げないほうがいい話題かもですが、これまでかすかに「美」から離れていっていたクロエさんが、本格的に「美」ではない路線に舵を切ったんじゃないか、という気がします。それがかえってそそるのですが。

そんなこんなで事件の真相までいくのですが、残念だったのは、セロンの見せ場があまりないところです。ヒロインの役柄は、基本的には真相をたどっていくものなので、印象的な場面はあまりない。

加えてネタバレを避けつつツッコむならば、悲劇の引き金となったヒロインの母親によるある「決断」は、切羽詰まった状況だとしてもあまりにバカすぎます(子どもたちのことを思ってといっても、当の子どもたちがとんでもない目に遭う)。それに、事件現場にいた「ある人」の指紋が検出されないわけがなく、されたとしたらその日から失踪しているのだから怪しすぎますし、にもかかわらず警察が犯人ではないかと疑わないとしたら無能すぎます。ベンが収監されてもなお、28年真相を語らなかったのも、動機が弱い気がする。

そんなツッコミどころはいくつかありますが、真相部分での現在と過去を短いスパンで行き来する編集はさすがに見事。「マッド・マックス」での大隊長ほど、セロンでアガることはできませんが、それでも若手実力派俳優が集った良質な一本だと思いました。