何をやってもダメな男、マイク。ロードサイドのコンビニ店員を務める彼唯一の救いは、脳内に書き溜めた妄想を嫌な顔せず聴いてくれる最愛な彼女だけだったのだが……。
「グランド・イリュージョン」のジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート共演の本作「エージェント・ウルトラ」は、ぼくのようなうだつのあがらないクソメンが血沸き肉踊るようなアクション映画だ。
マイクは、彼女との海外旅行を自分のせいで潰してし、気落ちしていたところ、謎のおばさんに話しかけられ、邪気眼が開くがごとく覚醒。それまでのヘタレな一面はどこえやら、エージェントを次々ぶっ殺してしまうのだ。こんな展開アガらないわけがない!
後半からは、ホームセンターでの殺人DIYなど、好事家を満足させる定番な展開を詰め込むにも余年がない。
しかしすばらしいのは、覚醒後のバイオレンスな展開の中でも、けっして覚醒前のポップな色彩を失っていないところだ。忘れてはならないが、本作はラブストーリーなのである。圧巻なのは、彼女を救いに行くクライマックスの突入シーンだ。映画史上、殺人集団に向かってあんなロマンチックに特攻する主人公を、ぼくは知らない。