いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

ニコラス刑事、そんな濃い顔で指名手配されたら大変でしょ!?〜ニコラス・ケイジ『ハングリー・ラビット』批評〜

ここ数年、ニコラス刑事といえばどうしても作品より名前が先行しがちで、観たらがっかりという映画が多かったのが個人的な感想だが、本作『ハングリー・ラビット』は予告編で面白そうなので期待してみてみた。

ニューオリンズに住む高校教師のジェラード(ケイジ)は、妻を何者かに強姦されてしまう。怒りと悲しみにくれていた彼のもとに、サイモン(ガイ・ピアーズ)と名のる謎の男が現れ、強姦犯の始末するのと引き換えにある用事をこなすという契約を提示してくる。ジェラードはその契約に乗り、実際に強姦犯は何者かに射殺されるのだが、それと引き換えに彼は、ある組織の陰謀に巻き込まれていく…。

まず、このタイトルの「ハングリー・ラビット」。観る前は「どうせマクガフィンだろ?」とか「どうせ空虚な中心だろ?」と見透かした気になりつつも、そうであることを期待していたのだが、結論から言おう。この言葉自体はわりとどうでもいい。意味は哲学書にもとづく含蓄のあるものなのだが、この映画内では、主人公を狙う“謎の組織”の合い言葉としての側面が強い。
その謎の組織とはなにか?
この映画は、舞台がニューオリンズであるということを明確に打ち出している。ここにこそ謎の組織の成立の動機が隠されている。数年前にハリケーンカトリーナの直撃に遭い、この街では一時的とはいえ秩序が崩壊し、犯罪が横行した。肝心なときに公権力というのは役立たずだということを、この街の市民は痛いほどわかっているのだ。謎の組織の背景には、こうした公権力への不信が存在する。


んで、映画の感想としては、うーむ……。
この手の謎の組織系サスペンスで何が重要かといえば、誰を信じていいのかわからない「ブルータス、おまえもか」的な緊張感じゃないだろうか。いま思いつくのでは、トム・クルーズ主演の『ザ・ファーム 法律事務所』なんかがオススメ。
しかしこの映画では物語中盤から、主人公が警察という公権力からも追われる逃走劇になってしまうから、そうした意味での緊迫感が薄まってしまう。だって、(たとえそれが濡れ衣でも)主人公は指名手配で追われる身になっているのだから、謎の組織もへったくれもないのである。ラストシーンでそれっぽいことが起こるけれど、そういうのをもっと早くやってほしかった。そのための「Hungry Rabibt Jumps」でしょ。
そうした意味で、サスペンスとしてはイマイチ。ニコラス刑事の次なる“代表作”はいつ観れるのだろうか…。

それにしても、こんな濃い顔で指名手配されたらバレバレで、ニコラス刑事も大変だなーと思ってしまった。時代の趨勢はやはり、ICHIHASHI逃走犯のようなあっさりしたタイプのイケメンなのかもしれない。