いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

ハライチ岩井が提起した「お笑い“風”」番組の問題


もうすでに半月ほど前になりますが、日本テレビが「24時間テレビ 愛は地球を救う」を放送した真裏で、テレビ東京は「ゴッドタン」3時間スペシャルを放送。「マジ歌選手権」に出演したハライチのボケ担当、岩井勇気が提起したのが「お笑い風」の問題でした。


「マジ歌選手権」にて「お笑いに対する愛を歌ったラブソング」として、岩井が披露したのが「OWA LIAR」という楽曲です。

お笑いではなく“お笑い風”とは何なのか。岩井は「OWA LIAR」でこう歌い上げます。

芸能人が笑ってる ゲラゲラ奇妙に笑ってる

全く面白くないことでバカみたいに笑ってるよ

インスタで話題…どうでもいい

大御所の自慢 聞き飽きた

番宣役者を持ち上げて

芸人たちがそれっぽく 笑いに変えて見せている

そんなもの…お笑いじゃない

お笑い風…俺はそう呼ぶ!


ゲストでやって来た俳優やモデル、アーティストらのつまらない話をお笑い芸人があたかも「お笑い」として成立した「風」にコーティングする。岩井はその「嘘」を告発しているのです。

もっとも、岩井は「お笑い風」を全否定しているわけではないようです。身の程を知って「お笑い風」を精一杯やりきる人材は、それはそれでいいという(その例として出てきた“とある芸人”のチョイスが絶妙というかなんというか爆笑するほかなかったのですが)。

しかし現実には、本来はガチンコの「お笑い」ができる高いスキルの人材ほど、「お笑い風」の現場で重宝される皮肉な事態があります。岩井の相方・澤部もそのスキルを「お笑い風」の中で遺憾なく発揮している。「OWA LIAR」はそんな澤部の「じゃない方」としてラベリングされることすらも拒絶しているかに見える「じゃない方でさえない」岩井の心の叫びなのです。

もっとも、「マジ歌選手権」は「マジ」と銘打ちながらもれっきとした「ネタ」披露の場です。岩井の「主張」も本気の本気であるとは思えない。話半分というところでしょう。けれど、裏を返せば半分はマジということではないでしょうか。

というのも、ぼくにもすごく共感するところがあるのです。感覚値ではありますが、「お笑い風」な番組ってここ10年ぐらいでめちゃくちゃ増えた気がします。たとえば「〇曜サプライズ」とかですよね(この手の番組ってなぜか日テレに多い気がする)。画面上は名のある有名な若手〜中堅芸人が出て、笑いが起きているけど、どこか見ていて居心地が悪いというか、楽しめないというか。


いつしかゴールデン帯は「お笑い」が目的ではなく手段になっている番組の方が多くなっています。こうすれば経済的にお得だとか、人生がはかどるという情報、広告がまずあり、それらを脚色するために「お笑い」が「風」を形成する状況。ぼくは個人的にこういう現象を「テレビ界の総『ヒルナンデス』化」と呼んでいます。テレビ番組はいつしか「面白いからみる」のでなく、「得だから見る」ものになってしまった。ぼくはその「総ヒルナンデス化」を忸怩たる思いで眺めています。

けれど一方で、テレビがそうならざる得ない状況があることも理解します。視聴率が20パーも30パーもあるのが普通の時代ではありません。テレビは広告主にすり寄らなければなりません。そういう状況なのもわかる。

そうした状況下では、「広告が邪魔なら金を払え」というわれわれ現代の視聴者にとって当たり前となりつつ「定理」に行きつくのかもしれません。今やお笑い番組はテレビの専売特許でなく、ネットにもフィールドは広がっています。

例えば、年会費4000円弱で視聴できるAmazonプライムは純粋に「面白さ」だけを追求する番組がわんさかある。野生爆弾の「ザ・ワールド・チャネリング」なんて、絶対地上波ではできないですよね。あらかじめ「見たい」という視聴者からお金を取っているわけですから、思う存分できるのです。

「OWA LIAR」を披露したあと、「『大人は妥協する』みたいな世の中が嫌」とこぼしていた岩井。いまや、妥協せずに金を払うべきなのはぼくたち視聴者の側なのかもしれません。


けれど、そんな過酷な状況下でも地上波で「お笑い」をぶっ放そうとするクレイジーガイたちがいる。何を隠そう、それがこの「ゴッドタン」なのです。大量のお笑い芸人が駆り出された「24時間テレビ」に真っ向勝負を仕掛けた「ゴッドタン」。実はそこには「お笑い」対「お笑い風」の縮図がありました。残念ながら結果は惨敗だったようでしたが、その「負けっぷり」にこそ「お笑い」番組に対する一筋の光明を見た気がするのです。