いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】狼の死刑宣告



最初は「なんだこりゃ!? こんなの俺たちのケビン・ベーコンじゃない!」と思わされますが、最後には「なんだ、やっぱり俺たちのケビン・ベーコンだった!」と安どさせられる、そんな映画です。

ベーコン演じるニックは企業の保険担当。妻とふたりの息子の核家族という「普通」の幸せに安住するお父さんでしたが、ある日、将来有望な長男を町のクズどもに理由もなく殺されてしまう。お父さんブチ切れ、復讐の鬼と化します。

ところがですよ。ニックはただのサラリーマン。対するクズどもは殺しも厭わない。重火器の扱いも慣れたものです。「お父さん、殺れんの?」と誰でも思うはずですよ。

たとえばジャウム・コレット=セラの快作「アンノウン」(同名映画との混同に注意)なんかはスマートです。リーアム・ニーソン演じる記憶喪失の学者が突然ゴリゴリのカースタントをこなせるようになって観客は「は?」となるわけですが、それもあとあと謎解きがちゃんとなされるわけです。

一方でこの「狼の死刑宣告」は、素人が突然バリバリのアクションができるようになるところをノーエクスキューズで突き進みます。さすがです。ベーコンですから。

クライマックスで、ついにクズどもを追い詰めたニック。そこでもさらにギアが一二段あがり、いよいよ素人ではどー考えても無理な、肉片飛び散るガチガチのアクション(でもこれはこれで◎)で畳みかけます。もうここまで来たら観客は「ベーコンなんだからしかたねーわ」「ベーコンだもん。相手が悪いよ」と思うしかなくなるわけです。

最後にエンドロールでもう一度、「ベーコン」の文字を確認して「ベーコンだもん。そりゃそうなるわ」とわれわれ観客は独り言ちて納得する他ないのでした。