乾くるみ原作の「イニシエーション・ラブ」の映画化で、前田敦子、松田翔太共演のラブストーリー。ここ数年、どうも有田哲平がテレビ番組で絶賛したことなどから、リバイバルヒットしているそうである。
原作を読んだ多くの人が、映画化のニュースを聞いたとき「え、映像化できんの?」と思ったはずだ。
ネタバレを避けつつギリギリまで行くと、本作の根幹には「叙述トリック」(文章の書き方によって読者をだますトリック)が仕掛けられていて、最後のページでそれを知ったことで、多くの読者は愕然とさせられるのだ。
ところがこのトリック、ふつうには映像化はできないのだ。できないというより、したらトリックにも何にもならない。誰も引っ掛けることができないのだ。そんなトリックが根幹にある映画を、どう映像化したのか。
結論からいうと、このトリックを映像化するに際しての設定の改変には、ふつーに笑った。それは失笑というより、素直に感心した笑いだ。劇場でも一番笑いが起きていたのは、このトリックが仕掛けられた瞬間であったと思う。
ただ、もしかしたら「んなわけねーだろw」「あほすぎワロタ」みたいな失笑も込みだったかもしれない。まともな監督があんなことをしたら、もしかしたらバカバカしすぎて怪しまれたかもしれない。よくも悪くも堤幸彦監督ならではの改変だったのだ。
映画全体としては、テレビ的な演出にはイラッとさせられる部分はあるけれど、基本的にはまずまずの出来で終盤までいく。お、このまま終わるのか、なかなかいいじゃないか堤監督! と思っていた。
ところがだ。クライマックスでついにことの真相が明らかになったときである。
あろうことかここで映画は、時間軸で最初までさかのぼり、ご丁寧にすべてをダイジェストでみせていくのである。これがサイコーにだせえ! ショックのあまりぼくはここで顔を覆ってしまった。もうそこはあっさり終わって、観客の頭ん中に「?」を点灯させとくぐらいがちょうどいいのに!
例えるならこれ、そこそこおもしろい漫才を披露したコンビが、舞台上でそのままその漫才について解説し始めるようなもんである。そこは「もうええわ」ではけてくれよ!
裏を返せば、どこまで観客がバカにしてんのか、という話になるのかもしれない。離乳食のように咀嚼してやらんと、観客はバカだからわかんねーだろ、と思われているのだ。堤監督本人の考えかは知らないが、この映画を作った、とくに上の方の偉い人たちはそう考えているのだろう。