いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

大日本人

バカなくらい松本人志論が好きというid:advblogさんのリクエストに勝手にお答えして(笑)、以前某サイトにupした映画評を加筆訂正して投下。


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この映画に対してはよく「映画ではない」などの批判、「映画って何かね?論」が展開されるのが、もはや当たり前になってきているが、それを言ったらもう堂々巡りで収拾がつかなくないだろう。芸術である以上、映画にも「映画というのは<こういうもの>」という固定概念があるのはわかる。しかし、その<こういうもの>の部分を守る側だけでなく、それを破壊する側も少なからず同居しているはずだ。でないと、映画という芸術自体の発展はとっくの昔に終わってしまっていただろう。


他にもこの映画の興行的不振を挙げて、松本は終わったという感想を飽きもせず展開している人がいるが、そもそもじゃあ松本のピークっていつだったのか?という話にもなってくる。
「クイズ」の漫才をやっていたことだろうか?それとも「キャシー塚本」を演じていたときだろうか?前者はもはや漫才をやらなくなった今日では比べようないが、後者の側も、もはやあのころのような刺激的なコントができなくなった今のテレビに出る今の松本とは計り得ないことだ。
というわけで、僕からすれば松本は、昔っから良くも悪くも同じ水準の笑いを提供していると思う。加えて言えば、センスに衰えはないだろう。衰えがあるとしたら、他の出演者のトークへの反応の速度だろう。


話はもどってこの映画、手法で言えば彼の以前のセルビデオ作品『頭頭』や『ごっつええ感じ』の「インストラクターシリーズ」を髣髴と させる「架空の事象をまるでありもののように現実に偏在化させる」笑いである。大オチはその分『頭頭』と若干被り気味だが、以前のそれよりも今現在の彼が言いたいことをたっぷりと詰め込んだということがこの映画には言える。
また敵として現れる獣たちも数年前彼が発売した食玩の不気味な動物のシリーズを思い出させるグロテスクさと笑いのフュージョン。素人に近いおっさんエキストラの不気味さ、おもしろさというものも「働くおっさん」シリーズからの彼のトレンドなのかもしれない。


したがって、この作品に対する僕の評価はダブルスタンダードにならざる得ない。松本のお笑いとしては結構使い回しが多いが、 既存の視覚芸術の観点からすれば、飛び級におかしなことをしているのである。


問題点をあげるならば、今回公開前から彼はベタに徹したといっていたが、これは明らかにベタではないし、注意していないと見逃してしまう箇所があった。逆にこれが全国民の趣味にあうのだとすれば、それはそれはハッピーな国になっていただろう。


松本の笑いがわかる/わからないという基準は長らく議論の訴状にあげられてきた。僕はわかるほうだと思うが、DT越えする奴がいないのだから彼らを見るしかないでしょう、と思うのだ。しかしこの松本の笑いがわかるというのが、笑いリテラシーが 高いということではなく、ただ単に「松本の笑いを見る身体」にお前がなっているだけなのではないか?と言われれば、それはそれで残念ながら否定しようがないのである。