いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

偉そうなオタクが減った代わりに、話を一般化してくれるオタクが増えてほしい


ちょっと前に読んで「なんか書きてぇ!」という欲望を喚起されたまま放置していた、id:p_shirokumaさんのエントリー。

偉そうなオタクが減った代わりに、ジャンルを系統的に把握するオタクも減っている
http://d.hatena.ne.jp/p_shirokuma/20081212/p1

この論題について、自分の脳内を整理するついでになんか書いてみる。
このエントリーにおいてid:p_shirokumaさんは、偉そうなオタクが減ったのにはライトなオタクの勃興などさまざまな理由があるが、なによりも、全てを知ることができないほど萌え系コンテンツが氾濫してしまった、ということがそもそもの理由ではないかと論じる。要するにオタク系コンテンツの大幅な増加によって、全領域を網羅的に押さえておくことができない状況になり、偉そうにしたいオタクも偉そうにできなくなっているということだ。そして同じ理由で、体系的にジャンルを把握するオタクも減っているという話。


偉そうなオタクが減った理由について、非オタの僕から、つまり「偉そうにされる側」、いつもは「ほえ〜」とリアクションをとらされる側からも、一言加えたい。
それは、「偉そうにされる側」も、彼らオタクに驚くことに飽きてしまったという要因だ。

蘊蓄をひけらかされる側からすれば、蘊蓄の内容は必ずしも重要ではない。例えばそれは、「トリビアの泉」を視ていた者の快楽に近い。僕はトリビアを視ていたが、放映後しばらくは覚えていた無駄知識も、いずれは忘れてしまう(少なくとも、全てを覚えてなんかいられない)。それでもこの番組を見ていたというのは、それが知識の蓄積を目的にしていたからではないからだ。あの番組には、知識を「知らない」から「知る」へと転換する、豆電球をパッと輝かせるような快楽が隠されていたのではないだろうか。そうだから、極端にはその内容はどうでもいい。ひょっとしたら前に聞いたが忘れていたものでさえ、「知る」(思い出す)という意味では、再利用できるのだ。

オタクの知識のひけらかしを聞く非オタクにとっては、オタク知識の内容よりも自分の知らないことを教えてもらうということ自体に快楽を得ていた可能性も十分ある。オタク文化の拡大で、オタクが増加したのは必然的な流れ。結果的に、周りのオタクに驚嘆させられ続けてきた非オタクが、彼らの知識の膨大さに驚くことにマヒしてきた、とも考えられるのだ。

さて、そういう意味では、「知識に乏しい入門者を小馬鹿にしてまわるのが生き甲斐になっている」類の偉そうなオタクは消えつつある。

でも「偉そうにしても許されるオタク」というのは、僕個人の見解ではいてしかるべきだと思う。偉そうにするのには、何もジャンルを体系的に把握していなくてもいい。入門者や門外漢に対してもわかるように(できれば懇切丁寧に)、説明してくれるオタクがいてもいいのではないだろうか。僕も含めてオタク文化に詳しくない者も、その空気に触れてみたいという気持ちがないわけではない。そういう人に対して、話を一般化して説明してくれるオタクは是非とも必要な存在だ。そして、そんな役回りを担ってくれる人は偉そうにしてもいいと思うのだ。


オタクに限らず専門家(マニア)というのには、2種類の人種がいると僕は思う。専門家と「専門家もどき」だ。
その違いは門外漢に対しての説明・解説などに現れる。
例えば、専門知識Aについてその2種類の専門家に聞いたとしよう。ある人はそのAをその知識全体の体系の中での位置づけるともに、一般的な例えなどを出して、そのAの意味内容を要約、簡略化して、できるだけわかりやすくして説明してくれる。

その一方で、「このAはね、あのBとあのCの間のやつでね、それに加えてD・・・」という具合に、他の専門知識の羅列によって説明しようとする人を、僕は専門家もどきだと感じる。端的にいって、それは説明にはなっていないからだ。網羅的に知識を蓄えていても、それがどのような意味をするのか、その価値がわからない知識は、あってないようなものではないだろうか。


また、前者(専門家)はより話をわかりやすくしてくれるのに対して、後者(専門家もどき)は話をかえってややこしくする。これには構造的な理由がある。偉そうにすることが目的の専門家にとっては、その話を聞く相手にとって、わかりにくければわかりにくいほど、自分の得る優越感は比例して大きくなる。結果的に優越感が目的の専門知識というのは、―意識的か無意識的かは定かではないが―ややこしくなってくるのだ。

後者の専門家は優越感は得られ偉そうにもできるだろうが、前者の専門家のように他人から尊敬はされないのかもしれない。

(追記)
ブクマへの応答

id:kiichi55 >二種類の専門家は、ただ、アホか頭がいいかの話のような気がする。本質を理解している人は、人に合わせて話し方を変えるよ


いや、おっしゃるとおりですよ。アホでも後者の専門家にはなれますよね、覚えるだけですから。
反対に、頭のいいやつってその専門知識について話させても面白かったりするんですよね。