いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【書評】あんな「お客(クソヤロー)」も神様なんすか?/菊原智明

内容紹介
お客様はなんて勝手な生き物なんだろう(本文より)
もうイヤだ、会社に行きたくない……。
電話で怒鳴られ、会ったら嫌味を言われ、会社に戻れば追い打ちをかけるかのように怒りのメールが届く。
サラリーマンを憂鬱にさせるお客からのクレーム――。
だが、そこには自分では気づくことのできない、ビジネスの真の情報が詰まっていた。
クビ寸前のダメ営業マンだった著者が見つけた、クレームを武器にするテクニックを実例形式で案内する。

7年間住宅販売のダメ営業マンだったという筆者は、ある転機をきっかけに発明したセールス方法で、営業成績トップに躍り出たという。本書は、そんな筆者自身が出くわしたクレーマーの事例8パターンと、それらにどう対処したかを紹介し、クレームを次のお客への営業にいかす方法を、指南している。

サブタイトル「『クレーマーに潰される!』と思った時に読む本」に個人的に期待していたのは、ラーメン屋とかファミレスとか、いわゆる「サービス業」のクレームの話なのだけれど、そういうのとは少しちがう。某居酒屋チェーンのバイト経験がある身からすれば、ほぼ初対面の、それも数百、よくて数千円しか出していない客に、「神様」ヅラされるあの手の職種も、なかなかキツいものがある。
けれど、気を取り直して読み進めると、数千万円の買い物をすることになっている顧客と中長期的に接して、その中でクレームをつけられることも辛いことが、わかってくる。

些細な頼みごとから始まり、しまいには子どもの家庭教師まで頼む客、ジキルとハイドのように昼間承諾したことを夜になってメールで反故にする客、説明を都合よく解釈してあとから文句をつけてくる客などなど……はぁ、世の中にはいろんな人がいるのだなぁと思い知らされる。もっとも、多くの客にとって住宅は一生に一度の買い物であって、多少神経質になることも無理からぬことなのかなぁと、客の側の心理もわからなくもない。


クレームを発生させる1番の原因を、筆者は「営業マンの油断、甘え、そして逃げ」なのだと言い切る。下手に振る舞うと客の反感を買い、クレームがさらに別のクレームに飛び火してしまう可能性があるため、「クレームは信頼関係をより深めるチャンスだと考え、前向きに、真摯に取り組む態度が必要」(p.177)なのだ。
また、なるほどなぁと思ったのは「表面化しない不満」について。頻繁にクレームをつけてくる客より、黙っている客の方が、実は不満を溜め込んでいてあとで大爆発する恐れがあるというのだ。そのため、クレームがクレーム化する前に、引き出す能力がいる。これは、営業職にかぎらず人間関係全般にいえると思うのである。例えば恋愛なんていうのは、不満が積もり積もって最後にドカンで終わりってことが、ありますからね……ええ……。普段から注意して、相手の「クレーム」を引き出すしておいた方がよいかもしれない。
筆者は、こうしたクレーマーらこそが営業マンにとって「最高のコンサルタント」だとして、次回の教訓に活かすべきだという。まぁ「失敗を次に活かす」のは、有能な人ならどの業種、どの職種でもすでにやっていることだろう。


ここまではどちらかというとマイナスをゼロに戻す作業で、ではなぜ筆者がトップセールスマンになれたのか。その、ゼロをプラスに変えた部分については、終盤でこと細かに解説される。
このテクニック、なるほどたしかに筆者のような住宅営業や、保険の外交員、車のディーラーなどの中長期的な接客業では活用できるだろうけれど、先ほど書いたようにラーメン屋とかファミレスでは中々使える現場はないだろう。詳細は手に取って読んでみてほしい。


本書を筆者はこう締める。

 そうそう、本書のタイトルは『あんな「お客(クソヤロー)」もお客様なんすか?』でした。
 ここに、このタイトルへの私なりの回答を記しておきたいと思います。
 
 お客様は……、いやいや、クレーマーこそ、クソヤローこそ、神様です。
 あなたは、この回答をどう思われるでしょうか。


p.230


「クソヤローこそ、神様です」である。なんというポジティブシンキング。しかもそれを実践し、飯のタネにしていたのだからすごい。
クレームをつける瞬間の相手は「クソヤロー」であることに変わりないのだから、心の摩耗は避けられないだろうが、問題はその次だ。
お客のことを影で「クソヤロー」と呼び捨てることでかろうじて溜飲を下げている営業マンは、一度読む価値がある。あなたの「クソヤロー」が、ご利益のある「神様」に変わるかもしれない。