いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ブルー・リベンジ

「復讐者」や「復讐の鬼」と聞くと、怒りに肩を震わせる物々しいビジュアルを想像しがちだが、本作『ブルー・リベンジ』は、映画史上類を見ない間抜けでおとなしい復讐鬼による、映画史上類を見ない不格好な、ドン臭い復讐劇といえるかもしれない。
青いオンボロセダン(本作にはいろいろなところにテーマカラーの青い物体が配置される)での車上生活を送る毛むくじゃらの男ドワイトは、呼び出された警察である事実を知らされる。ある男が、司法取引によって釈放される。男はドワイトの放浪の原因であるとともに、復讐を果たす相手だった。


映画は冒頭、静かな立ち上がりを見せる。ドワイトの日常を映す映像で、彼がほとんどしゃべらないのだ。
釈放を知り、復讐の準備を始める彼だったが、それがまったくスマートではなく、お茶目ですらある。拳銃を手に入れようとして失敗ばかりを繰り返す彼を映す場面は、さながらサイレントコメディのようで、単純なハードボイルドものとは一線を画している。

しかし、いざ血みどろの復讐劇が決行されると一点、とあるボタンの掛け違いから、復讐が呼ぶ復讐というバイオレンスな方向に展開していく。

でもやっぱりドワイト自身はどこまでも滑稽で、正直なところ復讐者としては失格の烙印を押したくなる。待ちぶせ中に寝ちゃうし。とくに、足に刺さったボーガンの矢を必死こいて抜こうとし、失敗する場面ではちょっとした笑い声が起こっていた。シリアスな暴力と乾いたユーモアが同居する点では、なるほどコーエン兄弟に似ていると言われるのもわかる気がする。

映画が最終的に行き着くのは、際限のない復讐の連鎖が不毛な血を流していく暗い場所である。