イギリスの省庁に勤務する水産学者のアフルフレッドに、ある日珍妙なメールが舞い込む。送り主はイエメンの大富豪をクライアントに抱える投資コンサルタントのハリエットで、要件は中東の砂漠で鮭釣りを実現させてほしいという奇妙奇天烈なオファーだった。アルフレッドは当初、鮭の生態的に不可能だとして相手にしなかったが、計画は政府の都合で瞬く間に国家的プロジェクトに祭り上げられていき、彼は半ば強制的に巻き込まれていくことに……。ユアン・マクレガー、『ルーパー』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』と、近年注目されつつあるエミリー・ブラント共演。
気まぐれな金持ちの道楽だと高を括っていたアルフレッドだが、当のクライアントであるシャイムと接することで、徐々に彼の考えも変わっていく。シャイムの瞳はイエメンで実現する鮭釣りだけでなく、その向こうに未来の母国の姿も見据えていたのだ。彼は、理想と現実とを架橋するのは「信心」で、いくら実現可能性が低かろうと信じて取り組むことこそが大切なのだと、アルフレッドに力説する。わりとありふれたことを言うのだが、アムール・ワケドという俳優が演じるこの人物に妙にカリスマ性があり、なんかすごく大切なことを言われたような気になる。
ただ、予告を観てからの鑑賞だとミスリードかもしれない。というのも、アフルレッドはムリムリーと取り合わなかった計画だが、ハリエットによってイエメンの気候上は可能性かもしれないと早々に指摘されてしまうのだ。途中、鮭1万匹を提供することにイギリスの釣り人に反対されたり、イエメン地元民の反発にあったりするのだが、あくまでそれらは人災であって、鮭釣り実現までに挫折する経験は思いのほか少ない。そういう点で「あー、信じれば願いってわりとスムーズに叶うのね」という気がしないでもない。
こういうとスカスカな内容に思われるがそうではなく、映画にはもう1つ山があって、それはアフルフレッドとハリエットの関係性。お互いにパートナーはいるが、それぞれに問題を抱えており、そんな中で一緒に困難な仕事をやり遂げようとするのだから、そりゃ好きになっちゃいますよねーという話だが、2人のやり取りは寿司でいうガリ程度のものなのかと思っていた分、「あ、そこ付き合っちゃうのね」というのはすこし驚いた。個人的には、意識し出す前の2人の冷めた上にちぐはぐなやり取り(「水」のくだりとか最高)が好きだったので、次第に2人がマジトーンでしかしゃべらなくなり、ギャグパートがおバカなイギリス政府専属になっていく過程は寂しかった。
ということで、「砂漠で鮭釣り」+「恋愛」というひどくいびつな組み合わせだが、大ゴケはしていないので最後までそれなりに楽しめる。あとエミリー・ブラント、『プラダを着た悪魔』で鼻炎の秘書役をやっていた時も思ったけど、この顔、タイプ。

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