いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

しりとりエッセイ「ブクロ」

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先日、たしかあれは新宿に行く山手線の中だったが、2人の女子中高生が「渋谷・新宿はやっぱ怖い。池袋は落ち着くわー」という旨の話をしている声が聞こえてきて、思わずそちらの方を向いてしまった。


というのも、ぼくからすれば池袋と渋谷・新宿のイメージがまるで正反対だからだ。ブクロはぼくにとって怖い街だ。何が怖いかというと、ズバリ人だ。

 

ここでいう怖いとは、「ヤクザが怖い」というときの暴力への恐れではなく、畏怖とミステリアスの中間に位置する感情だ。なんといえばいいのだろう。渋谷と新宿を歩く人たちが、「進歩」「最先端」「洗練」を志向しているとするならば、ブクロの民は常にそのオルタナティブでぼくを圧倒してくる。


あるときは、往来のJR池袋構内で歯磨きしながら歩くおじさんを見た。シャカシャカ磨きながら、泡でも飛ばす勢いで。なぜ駅を歩きながら歯磨きする必要があるのか?止まって磨くことはできないのか?そもそも恥ずかしくないのか?そんなぼくの疑念が浮かぶよりも早く、彼はスタスタと歩き去った。どこで「ぺッ」するのかが気になったが。


また別の日の早朝、まだシャッターがちらほら見られる駅前を、豪快にゴミ箱を蹴ちらして歩く女を見たこともあった。女は、その近くをスタスタ歩く背広男をこれ以上にないほど罵倒しながらついて行っている。これだけなら100歩譲って、一夜を過ごしたあとに何かで揉めた男女のよくあるやつかと片付けていただろうが、怖かったのは背広男の方で、男はまるで罵倒女などその場にいないかのように無視してスタスタ歩き続ける。もしかしたら、罵倒女と背広男は赤の他人…いや、それにしても背広男が動揺しなさすぎである。これもなかなか奇妙な光景だった。


挙げればほかにもあってキリがない。ブクロは畏怖すべき街である。ブクロを分かった気になってはならない。あなたがブクロを見つめるとき、ブクロもまたあなたを見つめているのだ。