いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【映画評】アンノウン 95点

植物学者のハリスは、国際学会に出席するために妻とベルリンに降り立つ。ホテルで空港に荷物を置き忘れたことに気づき、ハリスだけで戻るも、その途中で事故にあって昏睡状態に陥る。4日ぶりに目を覚ましたハリスは、想像絶する事態に直面する。自分とは似ても似つかぬ男が、「植物学者・ハリス」を名乗っていたのだ……。


「脳内リーアム・ニーソン映画祭」開催中ということで借りてきた一本だが、どうだろう、いかにもテンション上がってくるイントロではないか。本作は、自分の人生を赤の他人に乗っ取られたてしまった男のサスペンス。なぜ彼が人生を奪われたのか、そして、乗っ取った者の目的は何なのか。
何がすごいってこの映画、この謎を皮切りにどんどん自分から追い込まれていくのである。観客は観客なりにどういうオチかの仮説を立てると思うが、映画はそれをあざ笑うかのように、どんどんありえる仮説を潰していく。え? そうでもないの? それもちがうの? となるが、そうやって仮説を潰すということは同時に、自ら追い込まれていくわけで、大丈夫かと不安になる。


が、ここまで期待をあげておいて、その期待を裏切らないオチなのである。シャマランみたいに「そっちに話を広げるんかい!」という論点外しや、「オチなんてなかったんや…」という肩透かしも食らわさない。がっぷり四つに組んだ上で、思いっきり上手投げされるような感覚。
さらに驚かされるのは、プロセスにあるやや不自然な箇所――ただの学者のはずなのにカーチェイスをこなす主人公――も、そのオチによって一気に伏線へと変わる、ということだ。絵画の上に浮かんでいたシミが、作者の意図でそこに構成されたデザインだった、と気付かされた気分になる。
ニーソン以外の役者陣では、ブルーノ・ガンツが演じる旧東ドイツの秘密警察メンバーだった老紳士が印象的。話はそれるが、「同じ質問をし続けると嘘をついたものは話の細部がちがってくる」という『善き人のためのソナタ』に出てくるものと全く同じ尋問の極意を語っていて、この極意自体は本物なのかもしれない。


打ちのめされた鑑賞後、確認すると監督のジャウム・コレット=セラは先月絶賛した『フライト・ゲーム』の監督ではないか! つまり、本作はセラ×リーアム・ニーソンのコンビ第1弾であり、面白くないはずがない。ちなみに、不気味な養子の女の子を描いた『エスター』の監督でもあり、彼が監督することが決まった実写版『AKIRA』にも、否が応でも期待が募るのである。

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