いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【映画評】人は変われるのか、変われないのか〜ブルース・ウィリスほか『LOOPER/ルーパー』90点〜

(チッチッチッチッ)「彼は、未来から来る敵を消す」ザッ ドン! という予告編がもはやおなじみになっているこの『LOOPER/ルーパー』。
主人公のジョージョセフ・ゴードン=レヴィット)は、未来から送られてくる者を葬ることを生業にしている。というのも、タイムマシンが可能になった30年後は、人を殺したら即バレてしまう犯罪者からすれば完全な(はずの)ムリゲー仕様なわけですな。
だから、未来から違法なタイムリープを送られてくる獲物を、「今」で待ち受けて始末するのが、彼らルーパーの仕事。
それで、このルーパーの「退職」というのが、このシニカルな世界観を決定づけていて、いったいどういうものなのかは、ぜひ実際に観て堪能してもらいたいわけですが。


観て初めてわかったことは、予告の乾いたロケーションで錯覚してしまいがちだけど、主な舞台となる若いジョージョセフ・ゴードン=レヴィット)のいる「現代」の側も、実はぼくらの今いる2013年からすれば40年後の「未来」という設定だということ。
つまり、この映画は今から「40年後の未来」と「70年後の未来」を行き来する話、というわけなんです。事前情報として、これだけはわかっておいてもいいでしょう。
じゃあなんでそんなややこしいことせにゃならんかというと、これにもちゃんと訳がありまして。
一言で言うとこの映画は、ターミネーター大友克洋AKIRA』でいうところの鉄雄を殺しにきたぞ、という話。ちょっと何言っているかわかんないと思いますが。


それでそれで、「現代」の若いジョーと、30年先の未来から送り込まれた年老いジョーブルース・ウィリス)がついにご対面して、てんやわんやしていくわけでございます。
ところで、ジョーを演じるこの二人。
一人二役ならぬ二人一役を演じたわけですが、この映画について人と話する時、いつもぼくは「親父が」とか「息子を」とか言い間間違えてしまうのだけれど、それは結局、二人が同一人物に見えなかったってことですなw 

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この映画で、ジョセフ・ゴードンをブルース・ウィリスに似せる特殊メイクを手がけたのは、実は辻一弘という日本人の方で、公開前から話題になっていた。ご本人も「最初この話が来たとき、不可能だと言ったんですよ」と振り返ってましたが、これは仰るとおり。
ただ、その特殊メイクと、レヴィットくん必死の特訓によって体得したブルース・ウィリスっぽさ(目を細めるところとか)で、限りなく彼に接近します(もっとも、下手に接近したからこそぼくは「親父」とか「息子」といい間違えてしまうんだろうけどw)。

けれど、そのような苦労をして取り入れた30年後の自分とのご対面という設定を、この映画はすごく「嫌な形」で使われていたと思う。とくに「身体に直接アレする」ところなんて、かなりエグい。さらに、序盤でまんま「悪い方のこぶとりじいさん」役として出てくるポール・ダノがやられる仕打ちなんて、ひえええっとなる。ここ、一瞬何が起きているのかわからないと思うけど、ワンテンポ後でわかる真の意味の残酷さに、ぞっとすると思う。


あと、毎度話が飛んで申し訳ないけれど、音楽もよかった。未来ということで、エッジの効いた電子音系の音楽を想像しがちだけど、70年代の古いブルースもフューチャされてて、それがカンザスの古い田舎町の「レトロフューチャー」感を醸し出していて個人的にはかなりツボだった。『マイノリティーレポート』みたいなこってこての未来より、ぼくはこういう方が好きだな。

そんなこんなで、最終的に年老いジョーは過去に来た目的をついに成し遂げようとする。
このとき、ヤングジョーは、おそらく彼にとってこれ以上にないある「決断」を思い立ち、実行する。それがなんなのかは、もちろん明かせませんが、ここにはある皮肉が隠されている。
若かりし自分について、オールドジョーは「お前は自分勝手だ」と口癖のように言う。そりゃ、改心して立派な友近似の嫁さんをもらっている彼からすれば、若い頃の自分はヤンチャなんでしょうけど(第一、現役の殺し屋ですしおすし)。
でもこのシーンで気づくのは、実はオールドジョーだって、ある目的の為に違法なタイムリープを使って過去にきて、さらにとんでもないことをしでかそうとしていたってことです。そういう意味で、「三つ子の魂百まで」という結論をこのストーリーは出しているように見える。年をとっても自分勝手さは変わらないね、と。
けれど、そのエゴイズムによって出来た時間の円環(まさにループ!!!)を、レヴィット演じる若きジョーは、ある方法によって断ち切ろうとします。


彼にとってこの結末はけっして幸せといえるもんじゃありません。


けれどその一方で、この映画は、そのジョーが断ち切ったことによって生まれたある「希望」を、未来へ向け放っている。それはもちろん劇場で確かめてみてくださいまし。

ということでルーパー。今年はしょっぱなからいい映画が観れたな〜。