芸能人の不倫が発覚して、ネット上でボッコボコになっている光景をみるたびに、つくづくアンフェアだなあという感情に襲われる。
そもそも、不倫について配偶者以外の第三者がガタガタ騒ぐことじゃない、という感情がある。
しかし、ここで書こうとしている「アンフェアだなあという感情」は、そうした「第三者がガタガタ騒ぐことへの違和感」とは別物だ。
「アンフェア」というのは、「そんなこと、誰も言ってなかったじゃん」ということだ。アコギな商売の代名詞である携帯ショップでさえ、わかりにくいなりにもうちょっと買う前にメリット・デメリットを説明してくれるだろう。一方、不倫バッシングについてはなんの最後通牒もなく、いきなりである。威嚇射撃もなくミサイルを撃ち込まれるようなものだ。
ちょっとわかりにくいかもしれない。
どういうことかというと、不倫でここまで叩くのなら、結婚したときにもうちょっと「そういうことへの留意」を持ち出す視点があってもいいのではないか、ということだ。結婚するときは「理想の夫婦だ」「本当におめでとう」「羨ましい」だなんだと祝福をしておいて、いざ不倫が発覚したら、手のひらお返して怒り散らすのが本邦の世論、マスメディアである。
以下が、2人が結婚したときの記事の一例である。
杏と東出昌大の結婚式が4日、東京の愛宕神社で行われ、その際に撮影された二人の幸せショットの数々が反響を呼んでいる。同写真は、杏と親交があり雑誌での対談経験もある漫画家の渡辺多恵子が5日にTwitterで紹介したもので、白無垢姿の杏と紋付き袴を着た東出の写真は、まるでドラマのワンシーンを切り取ったかのようだ。
杏と東出は2013年~2014年に放送されたNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で夫婦を演じ、今年の元日に入籍。実生活でも夫婦となった二人の結婚式の様子は幸せそのもので、同写真を見たファンからは「本当にすてきな写真」「末長く幸せになってほしい」など二人を祝福するコメントが相次いでいる。(強調引用者)
ほら、「一度結婚したら、他の人との交際が発覚した際に、とんでもない目にあいますよ」という説明はどこにもないではないか。結婚に対して人はポジティブな面しか見ない。引用する記事の問題かもしれないが、芸能人の結婚に際しては、たいていこうした「祝福ムード」が演出されるものだ。
不倫の原因は何を隠そう結婚である。結婚という行為自体に、そもそも不倫というリスクが内包されているのだ。
しかし、いざ不倫が発覚したら、恐ろしい「私刑」が待っている。結婚したときにあれだけ祝福していたのに。そのギャップについて、違和感があるのだ。
たとえば、以下のような記事があったら、納得できる。
ファンからは「本当にすてきな写真」「末長く幸せになってほしい」など二人を祝福するコメントが相次いだ。
一方で、結婚という決断を選んだ以上、今後2人は他の人との交際が発覚すると、バッシングされることが確実。そのため、ファンからは「そんなに安易に結婚して大丈夫なんですか?」という心配の声や、「もう二度と、他の異性と肉体関係を持たないということですね?」という確認の声、「すごい覚悟だ」という称賛の声が寄せられた。さらには、「もし不倫したら、絶対に叩きますからね?」「もし不倫なんかしたら、芸能界にいられなくしてやる」といった、見方を変えればただの脅迫でしかないコメントも散見された。
これぐらい結婚に関するネガティブな情報もあっていいはずだ。
結婚という入口の部分でやたら目尻を下げる人々が、不倫が発覚した途端、二重人格のように鬼の形相になる。
このギャップが、ぼくはただただ恐ろしいのである。