北野武監督作「アウトレイジ 最終章」。前作「ビヨンド」以降、韓国に拠点を移していたヤクザ・大友(武)。しかし、何の因果かまたしても彼をきっかけとして、関東・山王会と関西・花菱会の血なまぐさい抗争は最終局面を迎えます。
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「アウトレイジ」シリーズの面白さって、いくつかあると思うんですよね。1つは、ヤクザ社会という突飛な世界の突飛な論理を描いているようでいて、実は実社会の縮図であること。第1作以来、大友は哀れな中間管理職ばりに他人の責任をめぐって右往左往させられる。かわいそうなもんです。抑圧されて溜まりにたまったフラストレーションを、彼が最後に爆発させるのです。
もう1つは、話の発端は下っ端のちいさな小競り合いであったのに、あれよあれよと雪だるま式に取り返しのつかない暴力の螺旋へとビルドアップしていくこと。そうした暴力のもつ怖さを描いている側面もある。
そして最後に、名だたる俳優陣が全員強面(全員悪人!)を演じ、口汚くののしり合うのも楽しいじゃないですか。加瀬亮のヤクザなんてめったに見られません。
ではこの3作目はというと……。実は上記の3つの面白さっていうのはほとんど減じられているわけなんですよね。これが結構つらい。特に前半は花菱の内部のゴタゴタなのですが、おじいちゃんたちが小さい声でイヤミを言い合うのみで、ここでなかなかエンジンがかかってこないから苦しいわけです。説明セリフがやたら多いのも気にかかります。これが結構つらいのですね。流れがストップしてしまう。
かといえば、武さん演じる大友の行動についてはあまりにも説明がないから、何を考えてるのかよくわかんないんですよね。え、大友ってもっと共感できるキャラクターじゃなかったっけ? と思ってしまう。
身もふたもない話をすれば、この第3作は必要だったのかという話も思うわけですよね。前作「ビヨンド」では、悪徳刑事・片岡(小日向文世)に散々引っ掻き回され、さんざん手を汚した大友が、最後に漫才のオチの「もういいよ!」ばりに彼を撃ち殺して締めたわけですから。あれで終わっていてもよかったと思うんです。
ただ、ぼくはなにより、今作のプロモーションで武さんがいろんなメディアに露出したことを評価したい。酷い言い方をすれば、「アウトレイジ」本編より、武さんの出演したテレビの方が面白かったりする。けれど、それもこれも「アウトレイジ」がなかったら実現しなかったわけですから、それもふくめて「アウトレイジ」の手柄と言えなくもないかもしれません。