いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【マンガ評】賭ケグルイ / 河本ほむら原作・尚村透作画

政財界の子女が多数通う名門校、私立百花王学園。そこは伝統的に生徒間のギャンブルが盛んに行われ、それらギャンブルの結果に基づく階級制度が支配しています。生徒たちは、生徒会への上納金が収められなければ「家畜」(ミケ)という身分に堕ちる暗黙のルール。そんな熾烈極まる学園に転校してきたのが、黒髪清楚系のヒロイン・蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)です。夢子は生徒会を頂点にして学園の秩序を、狂気に近いギャンブルを通してかき乱し始めます。


夢子の存在は、ギャンブルにハマる人の本質をついています。夢子がギャンブルに浸るのは負けずぎらいだからでも、お金がほしいからでもありません。彼女にとってギャンブルの醍醐味は勝つこと、ではない。伸るか反るか、勝つか負けるか、生か死かはやってみないとわからない。そんな不確定性に自分の身をあずける緊張感こそ、夢子にとってギャンブルなのです。

このあたり、ギャンブルを普段やらない人は勘違いしていると思われます。賭け事は一度大きく勝ったとか、美味しい思いをしたばっかりにハマるものではない。賭け事そのもの、リスクを負っている瞬間そのものが快楽なのです。

そしてその快楽は、賭け金がつりあがるほど嫌がおうにも高まっていきます。夢子はそのためなら命を賭すことも厭わない。

だからこそ、黒髪ロングで清楚系の夢子が、いかさまをして勝とうとする相手に対してドSに変貌して撃退するのは、ただ単にズルをして勝とうとしたからではありません。彼女がいかさまを憎み軽蔑するのは、ギャンブルの最大の快楽である不確定性を毀損する行為だからです。

そんな本作ですが、何よりもインパクトあるのは各キャラクターの「顔芸」です。夢子の前にはなにかと高飛車で選民意識の高い上から目線なキャラクターがつぎつぎと登場します。彼らのギャンブル中のその「どや顔」たるや。「今からこいつ、ひどい目に遭いますよ」というフラグが立ちすぎて、読むこちらが恥ずかしくなってくるほどです。案の定、彼らは夢子にギャンブルでボコられて、急転直下その自信を粉々に砕かれてしまいます。その顔面劇的ビフォーアフターぶりが、本作の醍醐味のひとつでしょう。そのドヤ顔 → 呆然 展開は、5巻にして早くも様式美の域まで達している気がします。

一応、頭脳系バトル漫画として「ライアーゲーム」が好きな人は好きだと思いますが、基本的には可愛い女の子がさらす「イキ顔」や「アヘ顔」を楽しむための漫画だと踏まえた上でお楽しみください。