いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

売れない芸人が語った「夢のある不幸」の話がヤバい



夢を追いかけるか諦めるか、きょうはお笑い芸人による両極端の言葉を紹介します。

夢のない不幸より夢のある不幸

土曜日の「ゴッドタン」(テレビ東京)で、中々浮上するきっかけをつかめない中堅コンビを集めた「悩める中堅芸人 景気の悪い話サミット」を放送していたのですが、彼らが夢に関して「ゔっ」と心をえぐられる言葉を連発していました。

三拍子・高倉:「辞めたらいいじゃないか?」って思うんですけど、たまにネタ番組とかでこうやって優勝したり決勝行ったりするから、それでまた辞められないっていう
劇団ひとり:みんなでも、話聞くと「辞めれない」っていうね
矢作:あー、言うね!
劇団ひとり:今さらどうしたらいいの?っていう
マシンガンズ・西堀:だってなにしろっていうんですか?
ブラックパイナーSOS・山野:今やめてもたぶん、いいとこ就職できないし不幸だと思うんすよ。だったら夢がある不幸のほうがまだ救いがあるというか
マシンガンズ・西堀:わかる!(拍手)
マシンガンズ・滝沢:夢のない不幸より夢のある不幸ね
(一同拍手)


マシンガンズ・西堀:やっぱり知ってる不幸のほうが免疫あるんで
マシンガンズ・滝沢:慣れてますんでね!体が慣れてますんでね!
マシンガンズ・西堀:未知なる不幸は辛いじゃないですか。それでも普段いる不幸のほうがまだ、だってこんな不幸を10何年やってきてますから。

三拍子・高倉:最近ちょっと悟りを開いたじゃないですけど、僕らには売れる楽しみがまだ残ってるッて思うようにしたんですね
(一同拍手)
矢作:いい考え方だ!
劇団ひとり:(満面の笑顔で)売れてないって羨ましい!

これは、いわば「夢のサンクコスト」(埋没費用)の話です。彼らは、散々お笑いの夢を追いかけて人生を費やしてきた。費やしてきた時間が、次第に人生の内訳の大部分を占めることとなる。辞めた瞬間、その費やした時間が無駄になる。たぶん費やした時間が膨らみ続けたどこかの時点で、芸事の道を諦めて引き返すより、そのまま突っ走ったほうが「楽」だと感じる。逆に言うと、諦めないかぎり「費やした時間」は無駄とは断定できませんから。

安西先生による「諦めたらそこで試合終了だよ」という言葉。バスケなら諦めようが諦めまいが、試合終了のブザーがなります。けれど、「諦めたらそこで試合終了だよ」を人生に転用したとき、それは恐ろしい呪いの言葉と化すのです。


辞める事は続ける事よりもずっと勇気がいる

けれど当然ながら、「夢のない不幸」に一歩踏み出す人も中にはいる。それについて考えさせられるのは、今年1月に解散した人力舎所属のお笑いコンビ、巨匠のボケ・岡野陽一による相方・本田和之への言葉です。彼らはキングオブコント決勝に進出した実績もありましたが、本田はそのまま芸人を引退しました。
巨匠の解散について、奇しくも「ゴッドタン」レギュラーのおぎやはぎがラジオで語っていたのです。

お笑いコンビの解散の話題で盛り上がる中、矢作は「いいこと言ってんじゃん!」といい、解散に際しての岡野のコメントを読み上げた。


岡野は解散に際して「辞める事は続ける事よりもずっと勇気がいる事だと思いますし、あのいつもニコニコして訳のわからない小道具を7年間何の文句も言わずに作り続けてくれてた本田が、新たにやりたい事を見つけ、その道に向かって行くと決断したのは本当に凄い事だと思いますし、尊重したいと思った結果です」と、引退する相方にエールを送っているのだ。


矢作は、岡野の談話の「辞める事は続ける事よりもずっと勇気がいる」という部分を「すばらしい」と絶賛。「芸人って続けてるとどうにかなりそうな感じがしちゃうから、ずーっと続けてるもんね」と売れない芸人の実態を明かすと、小木も同意し「やり続ける方が楽だもんね」と、続けるうちにかえって辞めることの方が難しくなっていくことを明かした。


おぎやはぎの矢作兼 解散した後輩コンビの言葉に感動 - ライブドアニュース

お笑い芸人を引退したからといって「夢」がないわけではない。いやむしろ、ほかに「夢」を見つかる場合だってある。岡野の言葉は新しい夢を見つけた元相方へのエールと言えます。


「夢のある不幸」にとどまり続けるか、一歩外へ踏み出すのか。そのどちらが正しいかとか、優劣を言いたいわけではありません。夢を諦めるか、夢のもとで"殉死"を遂げるか、それらはどちらも覚悟の形であって、それがどうしようもなく尊く思えてしまうのでした。