いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】1941

1941 [DVD]

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スティーブン・スピルバーグが『未知との遭遇』につづいて撮った監督第6作である。1979年公開とのことだから、彼は当時まだ33歳だったのである(このときすでに『ジョーズ』『未知との遭遇』をヒットさせている)からやはりすごい。


舞台はタイトルとおり1941年である。アメリカ西海岸は、数日前に開戦となった太平洋戦争におびえていた。映画は、敵がどこから襲ってくるかがわからない恐怖に煽られた軍人、住民らが巻き起こすドタバタコメディである。

のっけからエンジン全開で、登場人物のほとんど誰一人まともな人がいない。全編でふざけまくっている
まず、キャラ設定がめちゃくちゃである。ある女性は飛行機に目がないのだという。求愛してくる男性にもつれないのだが、飛行機の中だったらことをおっぱじめるというのである。よくわかんねーよその設定。これは一例で、他にも多くのキャストが出演し、馬鹿騒ぎを繰り広げるのだが、どうもその動機がみなよくわからない。キャラにも一貫性がない。

個人的にスピルバーグには、人物の行為と動機の線を明確にする才能に長けているとの印象を抱いていた。それだからこそ、ハリウッドで確固たる地位を築いたのだと思っているが、この映画についてはその特性があまりみられない。

全編をとおして完全にふざけている。仮にも戦争映画だというのに、人っ子一人死にやしない。のちに同じ戦争を題材に『プライベート・ライアン』を撮影する監督とは思えない。
ただ、よくよく考えてみると、この不真面さには執拗な一貫性がある。いわば、不真面目であること一点にものすごく真面目に取り組んだ作品にも思える。

では、その後ろ向きな真面目さはいったいどこからくるのだろう。おそらくその背景には、反戦という確固たる思いがあるのだろう。戦争に反対するがゆえに、徹底的にバカにし、こき下ろす。
ただし、それが上手くいったとは思えないけれど。