いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】フューリー 80点

第2次戦末期のドイツを舞台に、中戦車M4A3E8シャーマン「フューリー」号を駆り、ナチスの重厚な戦車と戦う米陸軍兵5人の姿を描く戦争映画。主演はブラピで、『イングロリアス・バスターズ』に続いてナチ狩りに挑んでいる。

といっても、実質的な主役はタイピストのはずが間違って舞台に配属された(人事部うっかりしすぎィ!)という『ウォールフラワー』のローガン・ラーマン演じる青年で、兵士として素人である彼の目線から悲惨な戦争の現実がとらえられていく。また彼自身も、戦場で人を殺すということ、そして、さっきまで生きていた愛する人が次の瞬間には屍になる、という壮絶な現実を目の当たりにし、次第に成長/摩耗していく。


ここ数年本当に多い「予告がほぼ展開わかってまいますやん」シリーズになっていて、その点でストーリー展開への感興は減じられてはいるのだが、それでも、泥土をキャタピラにつけながらドイツの曇り空の下を戦車が前進する姿は、見応えあり。
特に歩兵を従えながらの戦闘は、こちらが戦車映画をみなれていないからリアリティがあるかは判別できないが、なるほどというものがある。
人体破壊描写も、今の御時世では意外なほど頑張っていて、戦争はいつ死んでもおかしくないという緊迫感が全編に漂っている。ただ、実は本作で見どころの一つだという本物のティーザーⅠの見せ場はほとんどないのだけれど。


この映画で感じたのは戦車内部の空間の多面性で、あの狭い空間で荒々しい戦士たちが談笑を繰り広げる様はまるで部室のようになるし、もちろんそれは敵と遭遇すれば彼らが一致団結して動かす戦闘兵器になり、また決死の作戦の前に聖書の内容について談義する様はまるで戦地に赴く前に立ち寄った教会のように厳粛な場となり、場合によっては彼らの鉄の棺桶となる。


クライマックスの無謀なる作戦については、もちろんその激しい戦闘シーン、あるいは散っていく彼らの姿が見どころなんだけど、その一方でなんであそこでブラピがあんな無茶をしようとしたのかの根拠が曖昧に見えてしまう。もちろん、上官に指令を受けた時に、自分たちがキバらないとどうなってしまうのかは明示されていて、彼は命令を愚直に守ろうとしたまでなのだが、それでも、アッサリしすぎている感は否めない。あれがスピルバーグなら、もっとも印象的な仕方で「これしかないんだな」という気に観客をさせてくれたかもしれない。