いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【書評】もう国家はいらない/田原総一郎・堀江貴文

世界は未知で、可能性に満ちている―。個人資産が国家予算を凌駕し、テクノロジーの進歩が国境を無くす。世界が変わった今、新しいビジネスチャンスが生まれている。仮想通貨による取引のフラット化と活発化、シェアの発想が生む衣食住の共有、体験や時間の共有。異端ふたりの思想・発想から描かれる国家の解体と希望に満ちた未来図とは。
内容(「BOOK」データベースより)

田原さんと堀江さんの対談本、とは名ばかりで、対等な会話というより田原さんをインタビュアーとした堀江さんのロングインタビューに近い。とくに後半多くの分量を占める仮想通貨・ビットコインの話題では話し手/聞き手にほぼ完全にわかれ、田原さんはまるで「孫に新しいものを教えてもらうおじいちゃん」の役割だ。


国家はいらないとタイトルは大きくでているが、要はテクノロジーの発達で、マスコミや国家という仲介を必要としない個々人間の情報、もののシェアが普及し、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が向上していくことで、近代国家の存在感は今後ますます相対的に低下していくだろう、という論旨だ。

160ページ余りの分量のため、各論ざっくり触れた程度になっていて、言葉足らずなところはあるだろうが、堀江さんの考え方、今やろうとしていることをダイジェストで知ることができる内容になっている。
たとえば、反原発・卒原発派に反論する際に出た「パンドラの箱があったら、開けるのが人間」という人間観。あるいは、「人間は幸せになってきている、ならないといけない」や「人間は自分がつまらないと思うような労働をやっちゃいけない」という物言い。
「幸せになってもいい」でなく「ならないといけない」、「つまらない労働はやらなくていい」ではなく「やっちゃいけない」である。
こうした愚直なまでの進歩史観、あるいは“QOL至上主義”には毀誉褒貶はあろうが、同時にこの人の魅力であるのは間違いない。
楽しい仕事しかしない――そんな生き方を実行に移せるのは、堀江さんみたいに資産的、人脈的に恵まれている人だけだ、と批判することは容易い。シェアで何でも解決するとは思えないし、迂闊に思える発言もあるのだけど、ただ一つ間違いないのは、後に出てきたネオヒルズ族とかいう一群とこの人を比較するのは器が違いすぎるということ。虚業とは、彼らのことだったのだ。