いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】フライト・ゲーム 75点(リーアム・ニーソン目的なら100点)

空の上を仕事場にする航空捜査官ビル・マークスの携帯電話に、何者かから不正なアクセスがあった。
――1億5000万ドルを指定した口座に振り込まなければ、20分ごとに一人、乗客を殺害する。
20分後、実際に乗客が一人死んでしまう。かくしてビルによる、旅客機という密室での捜査が始まった……。


リーアム・ニーソンの魅力がパンパンにつまった一本。
『96時間』シリーズにも通ずるが、この人の巨躯と娘(という弱点)の組み合わせは、憂いに満ちた表情も込みで本当によく似合う。『96時間』での「優しくて強い、けれど弱いパパ」が好きという人は、まず間違いなく劇場で観ておくことにー損はないはずだ。ニーソンだけに!

と、変なテンションになってしまい、似顔絵も描いてしまったわけだが、本作での彼の役どころは航空捜査官=エアマーシャル。実際にある役職で、アメリカでは9.11以降に本格的に導入された、飛行中の旅客機内での起きた犯罪などに対処する覆面捜査官のことだ。
ただし、このエアマーシャルという仕事には、航空関係者の間でも賛否が分かれているそうで。
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武装した彼らが機内に乗ることがかえって危ないという声や、そもそもテロに対して効果があるのかという声、もしくは経費がかかりすぎると言った否定的な声もあるのだそうだ。

本作では、現実にあるそうした航空捜査官をめぐる問題、課題が、ストーリー上の重要な鍵となってくる。


先に「96時間」シリーズとの類似を指摘したが、ただしそうしたキャラクター設定とは別に、このマーシャル、ブライアン(96時間の主人公=ニーソン)の足元にも及ばないほど仕事ができない(というかブライアンが何から何までデキ男過ぎるという話ではあるが……)。
犯人の後手後手に回る手際の悪さは何ともいえないし、そもそも彼はアル中である。乗客は同時に容疑者であるため仕方ないところはあるが、乗客に対する接し方も荒い。そんなせいで、徐々に観客たちの間で、むしろ彼がヤバいヤツなんじゃね? という雰囲気がただよっていく。
鑑賞中、ぼくも途中で『マニシスト』的なサムシングでないかと案じてしまったが、そうではないので安心してもらいたい。彼は単に不器用なだけなのだ。
ただ、この仕事のできなさや、乗客の間で醸成される彼への不信感は、後半の熱い展開へのフリとして見事に効いているといえる。警官をドロップアウトした男が、別のあまりありがたがられていない仕事において大義を成し遂げる展開も、アツい。

ネットで「犯人の動機が弱い」という指摘を見かけたが、ぼくはそうは思わない。
というのも、この映画では「エアマーシャルの是非」について、冒頭からすでに示唆されている。そして、主人公自身でもあるエアマーシャルの存在意義と、アメリカの安全を否定する犯人の動機は、それに打ち克つ主人公と完全に対の関係になっている。
型通りのアクション映画ではあるが、100分強、リーアム・ニーソンを堪能するには不足のない一本だ。