「探し無精」っていう類型の人間が、一定数存在すると思う。
なぜならぼくがそうだからだ。
人類は60億人いるわけで、まさかぼくだけの特徴というわけではないだろう。
「探し無精」とは何者か。文字どおり、探しものを探すのを面倒くさがるのだが、(ぼくを含めて)彼らには脳裏にはある特殊な心理的葛藤が存在する。
探さないといけないのに、探さがせない。もしくは探したいのに、探せないのだ。
たとえばパスポートや人に借りたものなど、わりと重要な「探しもの」を想像してみてもらいたい。広い部屋ではない。たいていの探しものの在処なんて「目星」はつけられるはずだ。あとは実際に手を動かすだけ。そう、手を動かすだけなのだが、それが動かせない。
というのも、その「目星」がついた場所に「実際はなかった」という事態を想像してしまうからだ。
「目星」の場所を想定して、そこをガサゴソとやったところ、出てこなかったとき。第1候補のみならず、第2、第3、第4の「目星」を調べあげた末、見つからなかったときの「そんなはずでは」という驚きと、こみ上げてくるめんどくささ、そしてある種の恐怖。それらの感情は「探しもの」の重要度に比例して増していくが、それを想像すると、「目星」をつけた段階で二の足を踏んでしまうのだ。
そうなると、「『目星』はついたから、探すのはあとにしよう」となるわけだ。ベッドの上でゴロゴロやったり、他の用事を入れて、先延ばしにしてしまう。当たり前ながら、それは破滅へと向かって突き進む行動だ。
こういう生態は、人生に重大な分岐点を作るかもしれない。
たぶん相手は自分に好意を持っているだろうが、確かめるのが怖いので放置する、とか。あの会社への転職はきっと自分の実力ならば叶うだろうが、確かめるのが怖いので後回しにしよう、とか。
箱のなかの半死半生の猫の生存に確信をもってみても、いざ箱を開けるのに尻込みしてしまう。けれど、猫だって老いていく。確かめずに放置していたら、老いぼれて死んでしまうだろう。
「探し無精」はそんな愚かなタイプの人間なのだ。
ということで、ここで一つ告知をば。
今日8月31日PM8時からの放送の恒例のUstream、今回のテーマはこちら。
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「探しもの」といえば、人間だって見つからなくなることもある。
そして彼/彼女が「見つからない事実」そのものが、尾ひれをつけて泳ぎ始めるということもある。『アズミ・ハルコは行方不明』は、全部ではないがそんな側面もある一冊。