- 作者: 結城康博
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/05/16
- メディア: 新書
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内容紹介
2015年には独り暮らし高齢者600万人、「最期は家で独りで」の時代が始まる。そのために知っておきたい現実…。例えば、遺体の検視は? 2,3日以内に発見されないと? 葬儀、遺品、部屋、遺骨などはどうなる? 男性のほうが孤独死しやすい? 多少でも財産があれば親族が現れるって本当? 悲惨でない孤独死とは? 政府が「自助」を唱える時代にどうすればよいのか? もはや他人事ではない孤独死問題への必読の書。
NHKが数年前、「無縁社会」と銘打ってセンセーショナルに特集し、社会問題に浮上した「孤独死」。少子高齢化が進行し、地域の関係性も希薄化したいま、誰にも看取られずに死を迎える「孤独死」は現実味を増している。
本書は、ケアマネージャーといういわば「孤独死の現場」にいた異色の経歴を持つ研究者による新書。タイトルの「リアル」からは悲痛な「孤独死」事例のルポが続く印象があるが、「孤独死」の現状や対策を紹介する意味合いが強いと感じた。統計に基づきながらも、民生委員など現場の声も紹介し、バランスがとれた内容だ。
筆者の考え方は柔軟で、なにも「孤独死」を撲滅すべきだという無茶な立場はとらない。もちろん未然に防ぐための「予防的視点」も必要だが、それと同時にやむなく「孤独死」しても、早期に発見するための対策を講じる「事後的視点」も併せ持っている。
早期発見が必要なのは、遺体の腐敗が始まってしまうからだ。
「無縁社会」放映時にも一部で出たが、「孤独死の何が問題なんだ?」という考え方もある。たしかに、本人が満足し、誰にも迷惑をかけないなら、それで問題ないとする考えには、一定の理があるように思える。
しかし本書を読むと、長期間放置された「孤独死」の遺体は腐食が進み、遺族や処理業者、大家さんなどにそこそこに迷惑をかけていることがわかる。本書でも少し触れられるが、放置される遺体は中々強烈だ。遺体から出る臭いを消すのは困難で、にじみ出る脂はいくら拭いても落ちないそうだ。
結果的に床を張り替えることになり、リフォームの費用は誰かが負担しなければならない。
こうした事情から「孤独死」のリスクがある身寄りのない高齢者が大家から敬遠され、住む場所が見つからない問題も出てきているという。
後半からは具体的な対策の話だが、おもしろかったのは、新聞配達員やヤクルトの配達員が一人暮らしの高齢者の見回り役を兼務しているという地域の事例だ。流行りの言葉でいえば、こうした事例は既存の社会システムを「ハック」しているわけだ。
一方で、異変があるからといって無断で人の家に入り込むのは不法侵入になるし、高齢者の所在の把握にはたとえ善意だとしても個人情報保護法が足かせとなる、というところに「孤独死」対策のジレンマがある。責任の所在の明確化と、信頼の担保としての公の介入が不可欠なのだ。
筆者は、少子高齢化や政府の政策もあり「自分の人生の最期を、自分ひとりで決められることができない時代になってきている」と分析する。
現に「孤独死」を遂げた人は、生前は会ったこともない多くの人の関わりの中で葬送されていくことが、この本でよくわかる。「死」を公共の問題としてとりあげるのはいま時代、必要な視点なのだ。あなただって、いつか隣人の存在を腐臭によって初めて知ったとしても、おかしくないのだから。