いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【書評】ちょいブスの時代/常見陽平

内容(「BOOK」データベースより)
同じ能力でも美人が優遇され、ブスは割を食う―ところが昨今はその傾向が逆転し、「ちょいブス」の需要が就職や恋愛、婚活市場で急増しています。常に優位に立とうとする美人より、空気を読み、おもてなしに長けた「ちょいブス」のほうが愛嬌があってよい、というのです。なぜ「美人」は避けられるようになったのか、そして「ちょいブス」な女性たちが愛されている本当の理由とは?「インターネットの普及で脚光を浴びた非モテ層」「容姿より内面重視」「後ろ向きの男女平等」など、時代を映すさまざまなキーワードと、それらを巡る事例を豊富に紹介しながら、めまぐるしく変動する現代社会において、幸せに生きる方法論を示す一冊。


みなが憧れる絶世の美女ではなく、目を背けたくなるようなガチブスでもない「ちょいブス」――本書はそうした容姿に"そこまで"恵まれていない女性らが、かえって持て囃される現代の「ちょいブス革命」を、著者が専門とする雇用・労働・キャリアの分野や、恋愛市場から分析していく。

筆者は、女性の社会進出が進むと同時に不況により男性の経済的、社会的な地位の低下で「後ろ向きの男女平等」(水無田気流)が成立し、これにより美貌以外の能力を有した女性がモテるようになった、と主張する。
要は、「カオとカネの交換」(小倉千加子)としての結婚が成り立たなくなり、自分で稼ぐ能力がある女の時代がやってきた、ということだ。


このように書くと硬い本のように感じられそうだが、内容は統計的に厳密に分析するというより、著者の実体験に基づく話が多く、ノリは軽い。なにより、時代的な考証が甘く、ちょいブスがモテていることが今に始まったことなのか、というのは疑問が残る。
「お金も稼げる美人」が最強ではないか、という話なのだが、美人は美人であるがゆえに能力を磨くことを怠り、周りからも性格が悪くみられるのだと、散々な言い草である。
先に行くほど話題がぶつ切りになるとともに、ページ数稼ぎなのかどんどん話が横道に逸れていく。社内恋愛を勧められるあたりで「あれ?おれ何の本読んでいるんだっけ?」と迷子になったが、書籍として一本にまとめるために力技を使った感は否めない。新書バブル期に雨後の筍のように続出した、ゆるふわ系愛され新書の残り香がする。
が、そんなことはどうでもいい。
著者はプロレスが得意分野だそうだが、最大の問題はこの本自体が「ガチンコ」でないということだ。なんだろう、何かを伝えたいという熱量が伝わってこない。所詮は編集者に請われて書いたという限界がのぞいているように、どうしても見えてしまうのだ。
最後の1ページに一行だけ書かれた「まあ、私の奥さんは、美人なんですけどね。」も、本書のオチであるとともに筆者の奥さんへの愛が感じられるよいところなのだが、見方を変えれば奥さんに「ブック」を飲まされたのでは、という疑惑も浮かぶ。本当に美人なのかもしれないが、ここはガチンコで「おれはちょいブスでも嫁が好きだ!」と宣言してほしいところであった。