- 作者: 三浦展
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/12/16
- メディア: 新書
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本全体が醸し出すのは、圧倒的な「今さら感」である。かつてマーケッターは消費社会の最先端をいく仕事である、はずだった。どこがどう今さらなのかという局所的な問題ではない。こうした分析手法、分析の結論、背景にある価値観がもはや時代の先を行っていない。まさかマーケッターが時代に遅れる時代が来ようとは。そして「かまやつ女子」に続き、圧倒的な悪意が感じられる「オヤジ系女子」というネーミングである。あまりのセンスのなさに、逆にセンスを感じるのはぼくだけだろうか。
各クラスタの趣味や趣向、価値観を事細かに分析しているのであるが、疑問に思ったのは、「昔からこういう女性はいたんじゃないのか?」ということだ。本書では通時的な分析は一切なされない。「昔はこうでなかった」という著者の印象論一点において、「オヤジ系女子」は"現代特有の現象"に仕立て上げられる。ほぼ同じ「オヤジギャル」という言葉が90年に流行語になったことを、当時マーケティング雑誌の編集長を務めていた著者が知らないわけないだろう。
さすがに本のデキにやましさを覚えたのか、あとがきで著者は「まあ、これは新書ですから」とエクスキューズするが、この本と同列に語られるのは他の著者に失礼である。