いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】L.A. ギャング ストーリー


1940年代の米ロサンジェルスを牛耳った実在のギャング、ミッキー・コーエンを逮捕するため、ロス市警が秘密裏に結成した"ギャング団"の活躍を描く。ジョシュ・ブローリンショーン・ペンライアン・ゴズリングらが出演。

ほとんど同じ時代、同じ地域を舞台にした映画にぼくの大好きな「L.A.コンフィデンシャル」があり、しかも今回はショーン・ペンに、みんな大好きライアン・ゴズリングなど、力のある俳優陣が揃いし、否が応でも期待度があがる陣容。


ただ、見終わってみると。。。

いや、悪くない。悪くないんだけれど。。。というところ。


「コンフィデンシャル」と比べたとき、何が1番ちがうかというと、一言でいえば「対象年齢」に集約されるんじゃないかと思う。
飲み物で例えるなら「コンフィデンシャル」が「深煎りのコーヒー」ならば、今作「L.A. ギャングストーリー」は「Qoo」だと思う。それくらい違うのだ。おそらく、小学生がみても話は飲み込めるだろう。


「コンフィデンシャル」は複雑に入り組んだ事件背景を、観客に懇切丁寧にかみ砕いて説明するでもなく、どんどん進む。小学生のぼくがそのすべてを理解できなくても十分楽しめてしまったのは、ブレーク直前のガイ・ピアーズ、ラッセル・クロウ、ケビン・スペーシーらの色気であり、そのノワール的な世界観によるところが大きい。
一方、今作は対立関係がはっきりしていて、とにかくわかりやすい。それはいいことでもあると思えるのだが、それにあわせ、登場人物のキャラクターも平板なものになっていることは否めない。


その煽りを最も受けたのは、ゴズリング演じるジェリーだろう。人気のゴズリングだが、ジェリーは上手く行けば彼史上屈指の人気キャラになっていたかもしれない。それぐらい、ポテンシャル的には「おいしい」役どころだったと思うのだ。
けれどそうはならなかったのは、このジェリー、好青年すぎるのだ。最初はミッキー逮捕に乗り気でなかったということはあるが、それ以外、女性には誠実だし、ごくごく普通の警官に過ぎないのだ。
何度も比較して申し訳ないが「コンフィデンシャル」でケビン・スペーシーが演じたジャックを思い出してもらいたい。清濁併せ飲みよろしくやっているが、いざというときに正義に燃えるかやこそ、いいのではないか。

ジョシュ・ブローリンも、一応主役のはずなのだが、一本気すぎてまるで魅力がなく、話が進むに連れ、画面には出てくるのだけど空気になっていく。
ショーン・ペンは青筋を立てて怒り散らしているのだけど、悲しいかな彼のいままでのどのキャラよりも魅力で勝ることはない。


ネットではこの映画を「B級」と評する向きもあるが、「B級」とは低予算の映画が苦し紛れに取った側面もあり「狙って撮ったB級」である。
キャストに恵まれた本作がそれを狙う道理はないだろう。「B級」と呼ばれる結果は、けして褒められたことではないということになる。