いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

「壁ドン」が「壁ドン」に取って代わられた日

昨日、衝撃的な事実を知った。
「壁ドン」が若者の間でブームに - ライブドアニュース

壁ドンで胸キュン?は??と思いながら記事を開いてみると、冒頭からこれである。

壁を背にして立ち、異性に迫られる恋愛のシチュエーションが「壁ドン」と呼ばれ、若者たちの間で流行になりつつある。


????


冒頭から度肝を抜かれる「壁ドン」の定義が披露されるのだが、別にこれはオチへの振りではないし、虚構新聞でもなかった。少女マンガを発信源に、ファンが勝手にそう呼び始めたらしい。


んなアホな。
どうせ「話題になってる」というデマで人気にしようとする魂胆なんでしょ?はいはい電通電通〜。
ただ念のため、Googleで「壁ドン」を画像検索して確認してみたら、これである。

https://www.google.co.jp/search?q=壁ドン&client=safari&hl=ja&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=h7y3Ur2pAoTakAXfnoHoCg&ved=0CEMQ7Ak&biw=320&bih=484&dpr=2


少し異種も混じってますが、それはおいておいて。

いったいどうなっているんだ……。


いまやネットスラング「壁ドン」は、アホなカップルを盛り上げるためのしょうもない余興になりさがってしまっていたのだ!


言葉の意味など時代で移ろい行くものである。それはわかっている。
しかし、殊に「壁ドン」の場合はわけがちがう。というのも、「壁ドン」とはもともと、こうした意味とはまったくちがう、むしろ真逆な状況で、真逆のタイプの人間が使うような代物だったのである。


そもそも「壁ドン」とは、うるさい隣人への抗議の意志を表すために壁を叩く行為だったのである。隣の部屋の住人が、大勢で騒いだり、男女でよからぬ行為に及ぶ時に漏れる音に対しての、「うるせーぞ」という意思表示だったのだ。
なぜ隣の部屋の声が、はっきりくっきり聞こえるのか、それは彼らが1人ぼっちで在室しているからである。そしてなぜ些細な音に、ましてやカップルが仲睦まじく愛を育む行為の間の音にも寛容になれないのか、それは彼らの精神状態を察していただきたい。つまり「壁ドン」とは、リア充に無惨にも静寂を汚辱された非リアにとって、象徴的行為だったはずなのである。
しかし、前述したようにいまや「壁ドン」は、カップルの余興を指す言葉になりさがってしまった!なんという皮肉!!!


もしかすると、男が女にやった新「壁ドン」の音で、こちら側は「うるせーぞボケ」と旧「壁ドン」をかましているかもしれない。なんということだ…なんということだ……。


これまで以上に今回やつらリア充は、ガチで非リアを潰しにきた、と思った。
というのも、今まで非リアとリア充は、言語によって棲み分けができていたのである。
構造主義言語学のエラい人、かのソシュールはかつて、言語とは差異の体系であるといった。リア充という存在は非リアとはちがうという意味において、非リアという存在はリア充ではないという意味において存続し、お互いがお互いを別物と思うことで、自己のアイデンティティを保っていたのである


しかし今回は違う。彼らリア充は「壁ドン」という我らの言葉そのものを乗っ取りにきたのである。ある意味これは言葉狩りである。今回ばかりは、完膚なきまでに根絶やしにするつもりだ。

こうなったら、もはや我々は「壁ドン」を使えなくなる。我々の抗議は無効化されてしまったのだ。
彼らが「壁ドン」で、よからぬ行為へのムードを高めている間、「壁ドン」を奪われた我々は、その振り上げた拳の持って行き場所を失ってしまったのである。