いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】「超能力使えるワロタwww」というノリから一転、キレる10代が暴走する切ないSF映画/クロニクル

http://www.youtube.com/watch?v=StX8ww4AmtI:Movie

ある日突然超能力をもってしまった高校生3人の顛末を追ったSF映画
主人公のイケてない高校生アンドリュー君が、その他2人(こいつらはわりと普通)とともにある日突然超能力を持ってしまう。平凡な学生がある日突然……というストーリー展開は王道で、超能力もサイコキネシスというこれまたよくあるヤツで、これをただ単に劇映画調に撮っても凡百の映画の中に埋もれていたかもしれない。

けれど、この映画を突出したものに仕立て上げているのは、フェイクドキュメンタリという手法だ。いや、フェイクドキュメンタリ自体はありふれた手法であり、正確にはドキュメンタリ調×超能力により生まれた"効果"の方が斬新なのだ。
映画はほとんど全編、アンドリューの愛用するビデオカメラで記録(クロニクル)された映像、という設定で展開する。ここで考えてもらいたいのは、ビデオに撮られているとき我々に起きる身体反応についてだ。知人にカメラを回されている時、その事実自体が我々の態度を変える。そしてそれが嫌でない場合なら、テンションが少し上がったりしないだろうか? それは「今・ここ」だけでなくどこかの誰かに向けて記録される(クロニクル)ことを前提とした上での、独特の高揚感である。
そんな彼らが、あろうことか超能力を持ってしまうのである。多感な年代の彼らが狂喜乱舞して、その様子を映像に記録することは目に見えているだろう。
登場人物によって撮られているという設定により築かれるのは、彼ら3人とそれを見ている我々観客による、擬似的で秘境的な空間だ。要は、プライベートフィルムであるという設定であるが故に「内輪ウケ」感が生み出される。そしてその内輪ウケにさらされることが、彼らの陽気なキャラ設定もあって不快ではないのだ。
なによりも彼らの「超能力使えるワロタwww」「空が飛べた件wwwwwww」というテンションがいい。これをスピルバーグに撮ったら、もっと崇高に、もっと優等生っぽく撮ってしまっていただろう。彼に「www」は撮れない。


3人の夢のような時間は永遠に続くかのように見えた、途中までは。
内輪ウケで増幅した盛り上がりが「内輪」ではおさまりが効かなくなり、結果「炎上」するというのは、ちかごろ話題の「バカッター」にも通うずるところがある。
弱く優しい青年だったアンドリューは、その弱く優しい心根ゆえに、能力に翻弄され破滅的なエンディングを迎える。彼が本当は「いいヤツ」であることをビデオを知っているからこそ、観客は結末に対してはどうしようもなく切ない気持ちがこみ上げてくる。


というわけで観てもらいたい映画だが、公式サイトによると9月27日からの首都圏限定公開らしい。と思ったら、好評につき12日から上映館が首都圏外に拡大されるんだとか! なにはともわれ一律1000円のオトクロニクル(これは公式に書いてあったわけで、ぼくのセンスではない)らしいので、お早めぜひぜひ。