いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】地雷臭がしてまさか本当に地雷の訳ないと思ったら本当に地雷だった件〜トム・クルーズ主演『アウトロー』(原題:JACK REACHER)〜20点


この特報を最初に観た時、あふれ出る「地雷臭」に劇場でつい「あっ」て小さい声を出しちゃった記憶があるんですが。
けれど観もせずに批判はよくない。観てから言おうということで、ついつい観てしまいました。結果、自分の感覚は信じるべきだってわかりました。見事に地雷、踏んで参りました。


本作『アウトロー』は、トム・クルーズ演じる元軍のエリート捜査官が、かつてイラクで逮捕した元同僚軍人の起こしたといわれる狙撃事件を捜査するサスペンス映画。
まず最初に指摘したいのは、なによりもトム・クルーズがこの役に圧倒的に向いてないっていうこと。彼が隠そうとしても否が応でも漂ってしまうあの圧倒的な軽快さが、この役のすべてを台無しにしてしまうわけです。これは『コラテラル』を見た時も感じましたが。
トム・クルーズって、たぶんナルシストだと思うんですよ。人から自分がどう見られているかをめちゃくちゃ気にするタイプの人なんで、こういう無法者みたいな役は向いてないですよね。だって、無法者って語源からして「人のことなんて気にしない人」のことなんですから。
北野武も「間」の重要性を指摘していますが、トム・クルーズに関しては間の演技が向いてないっすよね。演技が下手っていうより、向いてない。それは前述した彼の軽快さに由来すると思うんですが、彼の場合は「間」はただの空白になっちゃう。


本編に話を移しますと、ぐうの音もでないほどテンポが悪い。ぼくの一番嫌いなパターンで、意味もなく面白くもない会話を勿体ぶってダラダラダラダラ続けるシーンというのがあるですけども、まさにその典型なんです。戸田奈津子の字幕のだっさい言葉遣いが、それに拍車をかけます。

アクションも、撮り方を含め悪くはないんですけど、全体的にちょっと少なくてあくまで添え物って感じがします。そして、クライマックスの「決闘」における驚くべきスケールのしょぼさは、誰もが納得するところなんじゃないでしょうか。

そして何よりも一番おかしいだろと思ったのは終盤、主人公たちが事件の背景にある重大な真実(ま、でもこの手のミステリーではありがちなんだけれど)にたどり着くのですが、実はそれ、中盤で敵方の会話によって観客は気づいてるんですよね…。だからそこでショックの受けようがないですよね。どうしこういうことになっちゃったんだろうと思うわけですが、そのように、この監督が『ユージュアル・サスペクツ』でみせたストーリーテリングのキレが、みじんもない。


もっとも、ぼくは原作未読です。もしかしたらこれらの批評(というかほとんど文句)を覆すだけの理由が、原作にあるのかもしれないですよね。いや、むしろこれらを覆すだけの意味があるとすれば、今すぐAmazonで原作をポチりたいくらいですよ。

こういう散々な映画に出くわすとき、劇場で一緒に観ている赤の他人にまで「すいません」と謝りたくなる気持ちになるんですが、アレってなんなんでしょうね?

ということで、MI5の公開がますます待ち遠しくあった冬の夜なのでありました。