いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

もはや我慢ならん。マック店員は" 無愛想無料"で接客するべき

こっちを見ていた時点で、すでにイライラはしていたのだけれど。
岡山駅前の二階建てマックでポテトL60個挑戦してるから来い→店員が困惑 - Togetter

こっちを見ていてさらに怒りがわいた。
マックフライポテト60個の件に群がるクレーマーたち - Togetter

1つ目のポテト食ってたやつと周りで盛り上がってた奴らは、まあ今時の大学生というか、他にやることがなくて退屈なんだろうなーとか、岡山だししかたないとか、まだまだスルーできる。けれど、それを批判したアルバイト店員に対する2つ目のこいつらの言い分はちょっと許せないね。

こういう輩には体中の穴という穴にフライドポテトをブチ込んでやっていいと思う。いまなら全サイズ150円ですよってスマイルしながら。職業に貴賤はないなんて大ウソ。結局こいつらは「マックジョブ」をナメきっているわけです。
今回の騒動を、アルバイトが客への悪口をつぶやいたことで巻き起こった「よくある炎上」と同じようなものだと解釈してる人もいるみたいだけれど、これとアレとは似て非なるものだ。だって、こちらは他のお客さんも迷惑してるんだから。


この騒動は、日本のサービス業の抱える病理的な側面を浮き彫りにしたところがあると思う。
一言で言うとそれは、日本のサービス業の店員が「バカ丁寧すぎる」ということだ。そしてその一方で客は店を、店員をナメすぎなのである。


日本のサービス業の接客業がバカ丁寧すぎるのには理由がある。
一つは接客でクレームつけられるのはウザいし、作業効率を落とすから、保険として「とりあえずバカ丁寧」になっていく。


だがもう一点いえることがある。これは敬意一般にいえることだが、敬意とは自分に払ってほしいからこそ、まず自分から相手に払うものである。接客がバカ丁寧になる背景には、丁寧な接客、丁寧な言葉遣いでお客さんに気持ちよく店を利用してもらい、ひいては店のよい評判、よいイメージをもってもらおうという意図が当然あるはず。


だが現実は逆である。
商品の低価格化と接客のバカ丁寧化が同時並行的に押し進められた結果、おきたのはサービス業の“軽視”だ。
結局みな、バカ丁寧なマックをバカにしはじめているのである。マックはどこにでもあるし、いくら店員さんがバカ丁寧に接しても、人間と思っちゃいない。「いつでも・どこでも」均質にそのように接客されることはわかりきっているのだから、ありがたいなんて思っちゃいないのだ。おまけに正論をいえば逆に罵られる始末である。

だが、演出家の鴻上尚史さんがちょっと前に書いていたが時給800円で他人を“神様扱い”するのは無理があるのだ。結果的に、スズメの涙ほどの人件費のなかで客を「神様扱い」していくうちにすり減っていくのはなにか。店員さんの尊厳である。


では、店員がお客に誠意をもって接するように、敬語をつかわないまでもお客の側に、店員をひとりの人間として見なす最低限の振る舞いをさせるには何が必要か。
現金な話であるが、現金なのである。

前にこういう本を読んだ。

サービスはホテルに学べ (光文社新書)

サービスはホテルに学べ (光文社新書)

長年、ホテルを取材してきた著者によるエッセイなのだけれど、このなかにはお客さんとホテルマンのいろんなエピソードが収められている。読んでいて気持ちがよくなってくるようなエピソードばかりだ。「上質な接客」には「上質な接客の受け方」が常に対になっている。
もちろん、「深イイ話」ばかりを収めているからだと言えなくもない。けれどそれ以上に、店員さんとお客さんの間に人間的な交流が起きてると感じられるところが、その「気持ちよさ」の本当の源泉なんじゃないかとぼくは自己分析する。

この本を読んでいると分かることが一つある。ふつう、多くのお金を払えば払うほど客の態度がデカくなると考えがちである。しかし、事態は全く逆なのである。お金を払えば払うほど、相手に敬意を払い、居住まいをただすのは実はお客さんの方なのである。
なぜなら、彼らが払ったお金の少なくない部分は、ホテルの格式やブランドに対しての敬意という部分があるからだ。つまり、彼らは自らが払ったお金によって、自分の態度が規定されていく、というところがある。でもそれはけっして悪いことじゃない。

例えば、マックと同じようにホテルでポテトが低額で販売されていたとしても、上の人間たちはマックと同じようにホテルで振る舞うだろうか? 振る舞わないだろう、いや、振る舞えないだろう。そのような行いは「場違いな行為」として、ブランドや格式といったものが醸す見えない圧力によって封殺されるはず。

けれどもマックやサイゼリアにそのような格式はないし、お客の側もそれを払うだけのお金を出していないのである。


だから、マックの店員には言ってあげたい。もっと無愛想に接客していいよって。水の無料提供もやめたことだし、スマイルの無料提供もやめたら?って。たったワンコインに相手に払う敬意なんて含まれてないんだって。
そして、マックの店員が無愛想になったときに、それまでモヤに覆われていたある強烈な事実に、愚かな客も気がつくことだろう。


マックのポテトの安さとは、俺の安さでもあるんだってことに。