いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

陰謀論に弱い人たち

最近日中関係の議論が熱くなっているが、そんな中、とあるtogetterで陰謀論が展開されていた。その話はその方面の情報に通じている人のもので、なるほど納得できるところもあるし、ソースも確かなものなのだろう。だが、その一方でその話を聞いていた側、まとめた張本人の側が、やや誇張ともいえるほどその「真相」の側に深く感銘を受けすぎているといえるほど受けていたのを見て、少し違和感を持った。



陰謀論に「弱い人」という類型があると思う。

とりあえず陰謀論ってなんだ?ということでウィキを見てみる。

陰謀論(いんぼうろん、conspiracy theory/plot theory)または陰謀説(いんぼうせつ)とは、ある出来事について、広く人々に認められている事実や背景とは別に、何らかの陰謀や策謀があるとする意見を指す名称である。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B0%E8%AC%80%E8%AB%96

この説明によれば、とりあえず陰謀論の成立には「ある出来事」と、それについての「広く人々に認められている事実や背景」、さらに「何らかの陰謀や策謀」の三つが必要であるということがわかる(ちなみに、「陰謀論」という語そのものには対象となる議論の信ぴょう性などへの否定的な意味合いはない)。



たとえば、あなたのクラスメートにA子ちゃんというのがいたとする。そして、あなたはそのAちゃんが大好きで、絶賛片思い中だ。可憐にして清純、あなたの中ではすでに女神にまで昇華してしまったのがあなたの中のAちゃんといえる。


しかしそんなさなか、余計な横槍ともいえるようなことを別のクラスメートがあなたの耳元でささやいてくる。
「実はA子ね、陰で×××なんかしちゃってるし、△△△なんて下ネタも全然口にするし、実は%%%%円で来るもの拒まずに$$$までさせちゃうような、超悪いB子なんだよ」と。
規模は死ぬほどしょーもない縮小版ではあるが、これがごくごく一般的な陰謀論の展開といえよう。



あなたは突然床が抜けたかのような深いショックを受けるだろうが、ここで気をとり直して真偽を確かめようとするならば、あなたは陰謀論にちっとは耐性のある人なんかもしれない。反対に、B子であったことのショックで泣きじゃくりながら一目散で家に帰りベッドに突っ伏しているのが、陰謀論への耐性のない「弱い人」ということになる。


あなたの恋焦がれていたA子は本当にあなたが思っていた通りのA子なのか、それとも、裏で口には出せないようなおそろしいことに手を染めるB子なのか。一番手っ取り早いのは、直接彼女に聞いてみることだが、それは言うは易しするは難しというやつだ。やがては真実を手にすることができるかもしれないが、とりあえずこの時点ではA子である確率とB子である確率は、50:50だ。


だが陰謀論に「弱い人」の中では、そうはなっていないのだ。
陰謀論に弱い人の中では、実はB子は登場の仕方からしてすでにA子より「下駄」をはかされている。


最初、あなたの脳内では清純なA子のイメージのソロステージだった。あなたはそれをステージの下から目を輝かして見上げている。そこに、悪名高いB子のイメージはあとからきてただ単にそのA子のそれのとなりに並び、どちらを真実としてあなたが選び取るかを待っている、というわけではない。


そうではなく、むしろB子はステージ上で踊り狂うA子をドロップキックでステージ下に突き落としてから、独立独歩のオンステージをおっぱじめたのだ。つまり、後から来たものの方がドラスティックな印象を与えることができ、そのドラスティックな印象を補正することなく受け入れてしまう人こそ、陰謀論の類に「弱い人」に他ならない。



では、真の彼女はあなたがもともと恋焦がれていたA子なのだろうか、陰でめちゃくちゃやっているB子なのだろうか。


こういう場合、得てしてどちらでもないし、どちらでもあるのだ。つまり、昼間に神々しい笑みを向けてくれたあなたのアイドルAちゃんも彼女自身であるし、「陰で×××なんかしちゃってるし、△△△なんてことも全然口にするし、実は%%%円なんてはした金で来るもの拒まずで$$$$までさせちゃうような、超悪いB子」も彼女自身、ということだ。

人も社会も物も真実も歴史も、そんなにわかりやすくはできていない。まだら模様にちりばめられた光と影を、まだら模様ごと愛せということであるし、それ以外に僕らに術はないのだ。



ちなみに、陰謀論に弱い人というのはプロトバージョンのユーザーを置き去りにしてバージョンアップをバンバンかましてくるデバイスや、テレフォンショッピングでドラスティックに値段を下がる商法にも、実は弱いと思う。

後から来た(=新しい)ということが、はたして本当に良いことなのか。そのことへの懐疑心が薄いのが、陰謀論に弱い人の典型なのだから。