都議選あっさり決着ついちゃいましたね。これからは、都議選前夜の首相の「国政とは関係ない」は死亡フラグだと覚えておきましょう。
さて、少し前に僕は、恋愛を強者と弱者のゲームとして語るその語りそのもんへの違和を唱えた。恋愛に強者も弱者もいないんだよ、と。
例えば、僕は前から不思議に思っているけれど誰もこのことは言わないので自分で書くが、男の自称「恋愛強者」がいて、その彼女も女の自称「恋愛強者」だった場合、はたしてそれはどういうことだろう。一方が恋愛強者で、相手も恋愛強者だったのなら、それって本当に強者と呼べるの?と、思うわけだ。ひょっとしたら、お互いがお互いの弱い部分を相補している可能性だってある。それに強者に「収奪」されているのだから、パートナーは「弱者」になるのではないか?それとも「俺たち/私たちは恋愛強者なのだ/なのよ、ははは/おほほ」と御山の頂上から2人で高笑いを浮かべているのだろうか。そんなバカな話もないだろう。
(付け足せば、恋愛強者/弱者という話の起源には、ホモソーシャルな空間があるんじゃないかと僕は勘ぐっている。女性のいない男性だけの空間なら、強者弱者、というような見立ても立つ。だがそれはあくまで見立てとしてなりたつだけであって、恋愛は本来強者/弱者ロジックでは語れないはずなのだ。)
と言ってはなんだがしかし、この男女の仲に意図的に「強者」と「弱者」を作りだすことは、実は可能だ。婚活、とくに婚活パーティーによる婚活だ。
僕がもし、彼女もいなくてかつ、今すぐにでも結婚したいという段になれば、まず間違いなく婚活パーティやネットお見合いなどには「手を出さない」。だって、勝てっこないんだもの。その代わりに恋愛をする。いや、もう少し丁寧に言えば、「恋愛を探す」、だ。
どうしてかというと、僕なんかが婚活パーティに馳せ参じて、彼女なんかゲットできるわけがないからだ。参戦しないでもわかる。僕はまぎれもなく婚活“弱者”だ。
これはあくまで聞いた話や視た話ではあるが、婚活ではやたらと自分の社会的ステータスを書かされるらしい。歳はいくつで身長は何センチで、会社はどこで収入はいかほどか、それはもう事細かに。
想像しよう。僕が自分のそれをバカ正直に書いて、他の男どもと比べられた日にゃあ、そんなものを勝てっこないではないか。身長はU(アンダー)170、来春からの職も未定、無収入、趣味は読書。このデータをたずさえて参戦した僕をゲットしたいと思うような女と、僕ならつき合わない(きっぱり)。その人は、「男の先見性の見る目のなさ」が致命的だ(失礼!)。
婚活パーティでは強者と弱者が生まれる。それは、あの場が限られた時間、限られた空間における「市場」であり、そこで行われるのが「競争」だからだ。婚活パーティで結婚相手を探すということは同時に、大多数による「競争」でもある。ルックス、社会的ステータス、さらに、限られた時間で自分をプレゼンする例の「コミュニケーション能力」。それらをめぐって、他の人間と比較されるのである。そうなると欠点が多いほど負けていくというのが当たり前である。
だが恋愛は本来比較でも「競争」ではないのだ。もちろん、中にはクラスのマドンナA子ちゃんを射止めるために、日々「恋のライバル」と争っているという人もいるかもしれない。でも、結果的にその「恋のライバル」にA子ちゃんを奪われたとしても、それがその人の恋愛のすべてではないのだ。あまりご存じの人は少ないようだが、この星にはあなたの同性と同じくらいの異性もいるのだ。
なんと言えばいいだろう、通常の恋愛はどちらかというと相手の女性/男性との「すり合わせ」に近いもんがある。けっして誰かと争っているわけではない。むしろ誰かと競争するというマインドとは、真逆ですらある。だから僕は、タイトルに括弧書きで記したように、お見合いは否定しない。お見合いにしろ、「入口」である程度社会的ステータスを問われることに変わりはないだろうが、もしそこを通ることができれば、少なくともその「すり合わせ」には参加できる。大規模な競争に自らを仕立てる婚活パーティーよりは望みありだ。
僕の言いたいことがわかってもらえるだろうか。
そもそも恋愛の成立する場は、このように苛酷ではないのだ。なのに、であるにもかかわらず、恋愛では「モテない」と嘆いている紳士淑女は、より苛酷なはずの競争空間であるその「婚活パーティ」に身を投ずる。ここに婚活をする人たちの矛盾がある。それはまるで、まだ一部に上場するべきでない株式会社ほど、行き急ぐかのように上場していっているかのような、まことに不思議な現象だ。
本来婚活パーティというのは社会、経済的に「グレードは高いのだけれどなぜだか結婚できない」という、ハイグレード層の中でもごくごく一部の「へんてこな男女」のために催されるべきであって、婚活パーティというのは本来、きわめてニッチな産業であるはずなのである。
にもかかわらず、数多の「結婚難民」を自称される人々が雪崩を打ったかのように婚活パーティにエントリーをしているのが、僕は不思議でならないのだ。
…と、ここまでが最近の僕の認識だったが、昨夜たまたまTBSのビートたけしがやっているニュース番組の婚活特集を視た。
またいつものごとく「婚活パーティ大盛況!」という内容かと思えば、それがどうも違うらしい。なんでも最近では、男の側の席が埋まらなくて、婚活パーティを運営する会社は非常に困窮しているというのだ。取材の日も、その夜開催が予定されている会で、女性が60名余りの出席が見込まれる中、一方の男性参加者はわずか十数名(!)しか集まっていないというのだ。およそ女4人に男1人というなかなかのハーレム状態だ(その後、何とか過去の出席者に電話をかけて、会社は数の上では男女の「帳尻」を合わせられたらしい)。
これは、彼らが薄々気がつき始めたということの証拠ではないか。「恋愛でダメ」な俺たちは「婚活ならなおさらダメ」なんじゃね?ってことに。