いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

時にKYは、コミュニティを救済する

元ネタのこの記事は未読だったのだが、それについてある指摘をしていた人がいたのを知って、全部読んだ。

DQNと嗤うものがDQN? - 羽ばたけ鳥頭 - m-bird別館

ホットエントリーで皆が盛り上がっている最中に水を差しているようだったけれど、実は大切な指摘だと思った。
それに加えて、こちらのエントリーを引用をしておく。

気の合う仲のいい友達とみんなで何かをしたり話したりするのは楽しいですよね。

では、どのように「気の合う友達」というコミュニティを維持しているのか。

それは現実のコミュニティは「排他的」だからです。

友達を選べるから。逆に見れば邪魔者を排除してるからです。
なぜユーザー参加型サイトは人気になるとつまらなくなるのか - watanabiの日記

そこにコミュニティが形成されるということは、「その他の人」が排除されたということと地続きにある。そして、そのコミュニティで共有される「笑い」や「ユーモア」というのは、この排除の一形態だ。前にも同じようなことを書いたが、笑いというのは物腰は柔らかそうに見えるが、実はきわめて権力的な営みなのである。僕が思うに前出したあのエントリーが大多数の読者に面白がられるということは、畢竟あのような人たちが、はてな内部にはいないということ、非はてな住民であることを裏付けることになる。


もっとも、コミュニティの形成に必要なのは「何が面白がるか」の価値観の共有だけではない。精神分析と名探偵に共通するのは、「現場に何があったか」ではなく、「現場に何がなかったか」を着眼点を置くところだ。
つまり、コミュニティ内部で「何が面白がられないか」というのも、そのコミュニティの定義づけるための格好の材料になるのだ。例えば「薄毛に悩む人の会」(そんな会があったならのはなしだが)の内部では、ハゲを笑いのネタにするのはタブーだろう。「貧困をなくす会」ではビンボーネタで笑いをとる人はおそらく人格を疑われるだろう。どちらも本人による自虐ネタならいいではないかとも言えるが、「ネタ」にできるだけ実は本人にとってはそれが本質的な問題でなかった、というだけの話ではないか。それを笑いにするということは、少なくとも笑いのネタにできないほどにハゲに悩み、貧困に喘いでいる人を排除していることになる。

交流を深めて行く事で、共通の話題や身内にしか分からない内輪ネタが生まれたりして、コミュニティが濃くなってどんどん楽しくなっていきます。
同上

「何を面白がるか」、「何を面白がらないか」の価値観を繰り返し確認し合うことによって、共同体の強度は高まっていく。有り体に言えば中にいる人の居心地が、どんどんよくなっていくのだ。そして、内側の熱狂が高まれば高まるほど、共同体の内と外の価値観の乖離していく。ここで考えるべき重要な問題は、この乖離が起きていることに、特に中にいる人たちは気がつかないものなのだ。

そんなバカなと思うなかれ。世の中には「わらわはハッピーじゃ」という自分の感覚を、当たり前のように「世の中は万事ハッピーじゃ」とイコールで結びつけてしまうおめでたい人間がいる。自分の共同体とその価値観が、まるで地平線の向こうにまで続いていると思いこんでいるのだ。誇大妄想も甚だしいではないか。


あるコミュニティの中で、文脈を外してしまうヤツを人々はこぞってKYという。僕は以前から不思議に思っていたのだが、はたしてKYは一個人だけの問題なのだろうか。一人でKYを犯す人はもちろんいるのだが反面、公共の場であるにもかかわらず、その場に不適切な言動をとるグループをよく見かける。あいつらだって実は、KY集団なんじゃないだろうか。複数系のKY、KYsだ。
皆が通るようなところで邪魔になるのにたむろする、バカみたいな大声で話しバカ笑いをする、そしてその嫌でも耳に入ってくる話の中身は、はたからすれば全くもって笑えない、面白くない。愚かである。愚民である。


ついついこれは、高校生とかそのくらいの若者のことだと言いたくなるが、実は違う。性別年齢を問わず、どのようなコミュニティ集団だって、内側の熱狂が高まりかつ、その行き過ぎに誰も気がついていなければ、公共の場ではKY集団に成り果てる


そんなことを考えると、コミュニティの中で孤立するKYな人も、実はちがった見方ができたりする。

あなたのコミュニティに、みなとノリが合わなかったり、話の腰を折ったり、笑いの趣味が合わなかったりする、要はKYな人が一人いたとしよう。できることなら、あなたはさっさとそいつを追い出すべきだろうか。
とんでもない。もう一度よく考えるべきだ。
ひょっとしたらその人は、あなたのコミュニティが過剰になっていくのを防ぐ冷却機能の役割をはたしているのかもしれない。もしかするとそのお方は、外部にある他のコミュニティからKYな集団だと判断され見放されてしまうことを、たった一人で食い止めている、あなたのコミュニティの「救世主」かもしれないのだから。