いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【ほとんど『ザ・ノンフィクション』】荒れに荒れまくる『テラハ』最新回が暴いてしまったベール

動画配信サービス「Netflix」で配信中の人気リアリティーショーシリーズの最新シリーズ『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』が、急激に面白くなっているとぼくの中で話題だ。

普段は熱心な視聴者でなく、飛び飛びで観ているのだけど、先週配信された回は配信直後からSNS上で「一人で見ないほうがよい」「こんなの見たくなかった」といった不穏な感想が飛び交っており、気になったので中断したところから最新話までイッキ観した。

 

面白かった、とは軽々しく言えないようなガツンとくる衝撃映像だった。

テラスハウス』(以下『テラハ』)そのものは説明不要だろう。都会のおしゃれな若い男女6人がおしゃれなシェアハウスで共同生活し、恋だとか夢だとかに花咲かせながらわーわーやっているチャラいコンテンツである。

 

そんな『テラハ』最新回、第38話では女子プロレスラーの花が、スタンダップコメディアンを志す青年・快にブチギレてしまう。

そのブチギレぐあいが、もはやプロレスというよりガチ、かなりドキュメントであり、ほかメンバーのドン引きぐあいも含めて『テラスハウス』というフォーマットを一瞬だけ超えて社会派ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』に接近してしまった。

だから、ぼくのようなライト層が「おお、面白いドキュメンタリーやんけ」と目を輝かせる一方で、旧来の『テラスハウス』のコアファンほど「こんな『テラハ』観たくなかった」と落ち込んでいるようである。実際、『テラハ』をこれまで見届けてきた友人に聞いても、かつてここまで荒れたことはなかったとのこと。

 

とりあえず、先に本編を見ておいてほしい。オススメは、快と花の事件前の関係性を味わえるという意味で、第36話からだが、時間がないという人は、第37回からでも問題ないだろう。

www.netflix.com


怒りの原因は些細なことだ。きっかけは、些細な共同生活上のトラブルである。


しかし、そこまでのプロセスを知っていたら、このトラブルはトリガーにすぎないことが分かってくる。

では、何が原因だとするならば、ぼくは「経済問題」だと感じた。

 

第37話では、快と花を含むメンバー男女2対2で京都旅行に出かける模様が描かれる。

快くんはお金がないため、一度は旅行自体を辞退しようとしたが、結局、もうひとりの男に交通費・旅費をほぼ丸々だしてもらう形で行くことになる。

ところが、旅行先ではノリが悪い、お金を出してもらっているのに感謝の気持ちが見えない、といった理由から、快くんはせっかく男女の恋仲として上手くいきかけていた花ちゃんの機嫌を損ねてしまう。

発端となった京都旅行↓

 

ここから、雪だるま式に花の中で、快へのヘイトが溜まっていったように思える。そして、ついに先述したようなブチギレ事件に発展する。

 

今回の顛末を見て、ぼくは思ったね。カール・マルクスの言っていたことは正しかったよ。

マルクスは上部構造に先立って下部構造があると言っていた。下部構造とは「経済」のことであり、その上に「政治や宗教」といった経済以外の社会の営みが上部構造として建てられる。 下があっての上であり、その逆ではない。 つまり「社会の一番の基礎は経済である」というのだ。これがいわゆる、マルクスの「唯物史観」だ。

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経済学批判 (岩波文庫 白 125-0)

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これは社会の構造ととらえることもできるが、一人の人間としてもとらえることが可能ではないだろうか。

快くんはスタンダップコメディアンとして食べていけるほど成功していない。おそらくアルバイトもほとんどしていない。一言で言えばボンビーメンで、土台、ほかのメンバーと共に京都旅行を楽しめるような状態ではなかった。連れ(しかも、知り合ってそんなに経っていない)にほぼ全額を出してもらって行く旅行なんて、乗り気になれるはずがない。意中の女性が一緒ならば、なおさらだ。

経済という安定してなければ、心にゆとりはなくなるし、卑屈にもなってしまう。下部構造(経済状況)が、上部構造(気分、性格)を決めてしまっているのだ。

 

快くんが取るべき最善の策は、やはり旅行をキャンセルすることだった。それができないならば、旅先で徹底的に道化、幇間(場の盛り上げ役)を買ってでるべきだったのだが、彼の朴とつとしたキャラクターからしてそれは難しかったのだろう。結果、やはり旅行をキャンセルするのが一番だったのではないだろうか。もはや後の祭りだが。

 

貧困であり、徐々にほかのメンバー(特に女性陣)と精神的に距離が開いていってしまっている状況が、観ていて本当に痛々しい。最近、長かった髪を切り、敗戦間際の日本兵のようになってしまったビジュアルも悲壮感に拍車をかける。

 

道化、といえば、最新回では壊れてしまった(?)快くんのステージも一つのハイライトだ。

まるで上手くいかなかった京都旅行(そして、帰宅後に同居人ビビに鬼詰めされる)ショックが冷めやらない中、舞台上で失語症のように立ち尽くしてしまい、最後は狂ったように高笑いする。観劇に来ていた『テラハ』男性メンバー2人も固まる圧巻のステージングである。

貧困と孤立のスタンダップコメディアン。この組み合わせでホアキン・フェニックスの怪演が光る昨年の映画『ジョーカー』を思い出した人も少なかったようだ。

 

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Twitterで「快 ジョーカー」で検索すると…

 

『テラハ』の上部構造は「恋、夢、おしゃれ」であるが、そんな『テラハ』にも普段は隠れている下部構造として当然ながら「経済」が横たわっている。今回の京都旅行~花ブチギレ事件のプロセスは、今まで「恋、夢、おしゃれ」のベールに隠されていた「経済」の重要性を見事なまでに暴いてしまったのではないだろうか。

 

そして、このことはわれわれ傍観者たちにも「教訓」として返ってくる。もしも、目の前の恋に臆病になっているとすれば、それは自分の経済状態のせいではないか? 経済状態を安定させてから、恋に踏み出してもいいのではないか? 裏返せば、もしも経済的に安定してないなかでも、目の前の恋に全力投球できるという逸材がいたとしたら、その人はヒモとしての才能を有しているのかもしれない。

 

どちらにせよ、今夜24時に最新話が配信される。今から楽しみでしかたないのである。