いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【映画評】そこにいるのに“いない”夫とともに…夫婦なら身につまされる「ロング、ロングバケーション」


公式サイトより

ヘレン・ミレンドナルド・サザーランドが夫婦を演じる映画「ロング・ロングバケーション」は、老夫婦が繰り出す破天荒なロードムービーです。

ある日ウィルが訪れた実家に、結婚50年を数える母親エラと父親ジョンがいない。ガレージにあるはずのキャンピングカー(原題の「レジャーシーカー」は車種とみられます)もありません。ふたりは子どもたちに無断で、キャンピングカーを駆って旅に出たのでした。

老いたものの元気溌剌なエラと彼女を愛する博識のジョン。ふたりは幸福そうに見えますが、エラは余命いくばくもない病の身であり、ジョンは認知症だったのです。旅はふたりの夫婦生活の総決算的な意味合いも含まれていた。

映画は基本的にはちぐはぐなふたりのやり取りをコミカルに描きます。しかし、ときにジョンの「忘れる」という症状は悲しい事態を招かざるを得ません。

ジョンがエラのもとに“帰ってくる”のは一日でもほんのわずかなときです。いとおしいはずの息子や娘の名前すら忘れる夫。普段は明るいエマですが、ときには心が折れかけてしまうことも。

あなたが私から“彼”を奪った――焦点の合わないジョンにエラは思わずそう恨み節をぶつけてしまうこともあります。認知症にはそれ特有の苦悩があります。愛する人はそこにいるはずなのに、実は“いない”。死ぬこととも重病で意識を失うことともちがう、それ特有の「喪失」です。そのことを描いた映画では例えば、『きみに読む物語』があります。

半面、たまにジョン”戻ってきてくれる希望“があるからこそ、エラは大いに喜ぶのですが。

人生の終末期に、連れ合いに同じことがしてやれるかどうか。また、自分がそうなったとすれば連れ合いはしてくれるか? 朗らかなムードで終わる映画ですが半面、そのテーマは夫婦ならそう考えること不可避な一作なのでした。

今日は最後に、“野獣”こと柔道の松本薫の結婚会見での言葉を引いておきます。

「私の中では結婚=覚悟です。(夫と)老後や介護、最後まで寄り添えることができるかということが結婚と考えていたため8年かかりました」