いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【書評】「ブス」はいかにして生きるべきか 漫画家×哲学者がガチ対談『不美人論』

 

不美人論

不美人論

 

 

女の眼前には生まれたときから、二つの「道」が横たわっている。美人の道とブスの道である。どちらを歩むかは、はっきりいって天と地ほどの差がある。本書は「ブス」と自認するマンガ家・藤野美奈子と、哲学者西研の対談。ただ、出倉さんという編集者が西氏の存在をかき消すぐらい全面に出て活躍している箇所もあり、鼎談と表現してもいいかもしれない。

 
自称「ブス」の女子二人が、これまでの人生がブスであるがゆえにいかに不遇であったか、そのエピソードを時に笑いあり時に涙ありで西研に吐露していく。それに対して西氏が優しく「哲学的考察」をほどこしたり、自分の子供時代、大学時代の男の側の経験も開陳したりしていく、という構成だ。
 
ブスに生まれてしまったら、下手にブリっ子もできないし、合コンでも相手にされない。就職は不利だし、男の子には「勃たない」と言われてしまう始末。踏んだり蹴ったりなわけである。それはフェミニズムだけでは解決されない問題だ。「美醜で差別するな!」は政治的には「正しい」けれど、「正しい」から男のアソコが勃つわけではない。「人権」や「平等」というロジックでは、美醜の問題すべてが解決することはできないのだ。
 
ではどうするか。本書の提示する処方箋は、いわば「自分をもっと愛しなさい」ということ。ただしそれは、盲目的に自分の世界だけに閉じこもることではない(それはこの本の中でも「ブリっ子」で痛いと批判されている)。
 
 
そうではなく、自分がブスだということをはっきりと自覚した上で、もっと愛されたい、もっとかわいいと思われたいと努力することである。そうすることで、自分がブスだという事実を距離をとって見つめることができるのだ。何よりそのことは、たぶんかつては深刻に悩んでいたことを本書の中で面白おかしく話してくれた藤野さんが、魅力的であるし、ステキな女性であるということによって、体現されている。