いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【マンガ評】ふつつかものの兄ですが / 日暮キノコ


志乃は、思春期真っ只中の女子高生。友人に恵まれ、片思いの男子ともイイ感じ。放課後はバイトに精を出し、ハイスクールライフは充実しているはずでした、ある一点を除いては。“一人っ子”の彼女には誰にも言えない秘密があった。それは、4年前から引きこもり続ける兄・保(たもつ)の存在です。そんな、志乃が存在そのものをひた隠しにしてきた兄がある日突然、部屋から出てきて…。

引きこもりだった青年の成長と、その妹の恋愛模様を並行して描いていきます。

ドロドロした恋愛を描く「モンクロチョウ」の日暮さんが作者ということもあって、ヘビーな内容になってくるのかなと身構えましたが、ご安心あれ。志乃は兄に対して一見冷たく見えますが、ベースにはきちんと家族という認識があるから読んでいてほっこりする。いくら尊敬できなくて、社会不適合であっても、やっぱり兄は兄、家族は家族ってことなんですよね。

読んでいるこちらは、保に感情移入して大丈夫かな? ちゃんと社会復帰できるかな? とソワソワしてしまいますが、彼のピュアッピュアなキャラ(どうも引きこもり4年で心が洗浄されたらしい。ちょっとそこは理解できない!)に、むしろ癒されます。かつてこれほどまでに癒し系なダメ男いたでしょうか。

バイトでのささいなミスも、4年のブランク明けの保には大事です。引きこもっているうちに人生EXPでは兄を追い抜いてしまった妹は、兄に対して「ったくもう!」といいながら見守る肝っ玉母ちゃんのような風格を漂わせ始めます。保が成長する過程で、志乃も成長するわけですね。

4巻までのところ、保の社会復帰が上手く行き過ぎてて、逆にこの先どう落としてくるのか怖い面があるところも含めて、続巻が楽しみな一作です。