- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2015/06/03
- メディア: Blu-ray
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本作「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」は、人間社会にまぎれてひっそりと暮らすヴァンパイア男たちのモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)。同じシェアハウスでも「テラスハウス」ほど華やかでない、間抜けで気のいい未婚おっさんヴァンパイアたちの悲喜こもごもを描きます。
観ていると、そもそもこれをモキュメンタリーの手法をとる必要性はあるのかと感じますが、こういうことかもしれません。映画は終始、出演する吸血鬼さんたちがカメラ=カメラマン=人間に向かって語りかえる体で進みます。それはどういうことかというと、自分とは異なる者=異種に対して自己を開示することになるんですね。
カメラに向かっての未婚おっさんヴァンパイアさんたちの語りは、ヴァンパイアたる自分を当然のものとしない。自分と相いれない、自分のことを理解できない人たちに対してのそれになるのです。この映画をモキュメンタリーにした監督の狙いは、たぶんそこなんじゃないかって、思うんです。
そう、だからこのコメディ映画には「他者との共生」という意外とまじめな裏テーマが隠されているんです。
そんな彼らだってヴァンパイアですから。カメラマン以外の人をさらって生き血を吸って殺してしまうことだってあります。映画が描くのは、ときには人を殺めてしまうけれど、それでも人間となんとか共生しようとするヴァンパイアたちの努力です(ところで、カメラマンらだけノーダメージなのは謎です。もしかしたら後で殺されるのかもしれませんし、撮らせてくれたら大量の生き血を吸わせてやるとかなんとか契約しているのかもしれません)。
面白いのは、他の種と暮らすのは大変だというベクトルとは反対に同種であろうと一緒に住むのは大変だ、ということも映画は描がいている。途中、とある新人ヴァンパイアがシェアハウスに新しく”入居”する。でもそいつはヴァンパイアにまだ詳しくない上、底なしのバカであったため、既存の入居者に迷惑をかけ始めます。そして結果、彼は取り返しの付かない事故を起こしてしまう。
同種だからといって無条件に居心地がいいわけではない。ときにはヴァンパイアよりヴァンパイアに馴染める人間だっている。結局は種と種ではなく、個人と個人がどう付き合っていくかってことなんです。結局、自分以外のあらゆる存在との共生には幾分かの困難が付きまとうという話です。そこで大切なのはきっと、寛容であることや妥協できることなのでしょうね…。