いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ザ・ギフト


世の中には、たびたび贈り物をする人がいますが、あれはよくよく考えたら戦略として間違っていない。人間は反対給付(もらったらあげる)の概念がセッティングされていますから、贈られてばかりの人間は次第に申し訳なさとプレッシャーを感じてしまうものです。そうなると、贈り続ける側はますますゲームを有利に運ぶことになります。だからこそ、望まぬ贈り物が続くのは不気味ですらあります。


本作、その名も「ザ・ギフト」は、そんな「反対給付を不履行にされるギフト」をめぐるお話。俳優のジョエル・エドガートンが長編として初めてメガホンをとり、自らも出演しています。

映画の主人公は、故郷の街に帰ってきたサイモン(ジェイソン・べイトマン)と、妻ロビン(レベッカ・ホール)。新生活が始まった矢先、ふたりが街でばったり出くわすのが、サイモンの高校時代の同級生ゴード(エドガートン)。夫婦はゴードとまた連絡すると言って別れましたが、その後、ゴードからはことあるごとに無断で贈り物が届けられ始めるのです…。

ますキャスティングが素晴らしい。サイモンもゴードもはまり役だと思いました。べイトマン、ぼくは好きな俳優ですが、知的ではあるものの、どこか胡散臭そうな感じのする顔つきです。そして、監督でもあるエドガートンですが、お前絶対高校時代イケてなかっただろ! と思わせる顔つき。このふたりを持ってきたところに、キャスティングのセンスを感じます。


ゴードの「ふつうじゃない感」は突発的にではなく、徐々にあらわになっていく。真綿で首を締めるような、はっきりとやめてくれと言えない具合が絶妙でいいですね。

ところが、映画は「ゴードきめえ!こええ!」が臨界点に達したあたりから、徐々に別の位相へ。視点人物は妻リンダなのですが、あれ? そんな話聞いてないよ? という情報が徐々にあらわになっていき、事態がまったく別のもののようになっていきます。そして、最終的な大オチが待っている。もちろんネタバレは避けますが、このクライマックスについては不思議な感情にとらわれます。というのも、よくよく考えると登場人物の誰も救われてないんですよね。同情するべきなのか、ざまあと思うべきなのか、よくわからない玉虫色の感情にとらわれます。少なくともぼくはそうでした。

この映画は、作り手が「復讐」とは何かを非常によくわかっている点で感心しました。復讐というと、ただ単に復讐相手をぶっ殺せばいいかというと、そういうわけでもないんじゃないか、と思うんです。「あの世」を信じない人からすれば、相手は死んじゃった時点で苦しみは終わってしまうわけですから。復讐者が殺すことで気が済むのならそれでいいですが、相手を苦しめることを「復讐」だと解釈するのなら、いかにその苦痛を長引かせるか、自分のしでかしたことをいかに悔い改めるからですから。

とにもかくにも、幕が閉じた後に鑑賞者が「どういう気持ちになれっていうの?」と、いい意味で困惑させられるスリラーでした。