いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】二ツ星の料理人


ブラッドリー・クーパーが、性格に難ありだけど腕は超一流というシェフを演じています。彼が演じるシェフ、主人公のアダム・ジョーンズはパリで店をダメにした後、アメリカで放浪し、英ロンドンで再び自分の店を持つことになります。アダムがミシュランの三ツ星獲得を目指し、スタッフと衝突しながらも切磋琢磨していく、というストーリーです。

アダムはシェフとしての腕は超一流ですが、自分勝手でなかなかの性格の悪さです。自分のごり押しで集めたキッチンスタッフに当たり散らし、ひどいことを言います。パリにいたころは友だちの店に取り返しのつかないことをしていたようで、まあ酷いやつです。アダムには借金がありますが、勝手に返しておいてくれた元カノに「俺のことは忘れてくれ」なんていいますからね、あんまりです。

そうした性格の悪さは天才キャラにありがちですが、本作のアダムは、ストーリー上のプロセスを経て性格が矯正されていくのか、といえばそういう風にも見えず。アダム本人が変わるというより、むしろ周りが彼のために尽くし、彼を導いていっているようにしか思えません。

そりゃ、当代随一の色男クーパーが演じていますから、アダムがイケメンで、女から、そして男からもモテモテなのには異論はありませんが、それにしても、彼の甘やかしっぷりは度を越えています。観ていて、全然彼に共感できません。

そんなアダムですから当然報いも受けます。仲間に思いっきり裏切られるのです。観終えてみると、彼のストーリー上の障壁はすべて、「あの味が出せない」「いいメニューが思い浮かばない」といった職業上の問題というより、結局は彼が自ら破たんさせた人間関係のような気がします。そんなアダムのクライマックスでの変化といえば、前まで拒否していたスタッフのまかないを一緒に食べるようになったことですから。彼の店、この先も思いやられます……。