いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ノック・ノック

「ホステル」「グリーン・インフェルノ」のイーライ・ロス最新作は、ある子煩悩なマイホームパパが出会う悲劇です。妻と子どもが遊びに出かけ、一人仕事をこなす雨の夜。ノックの音がし出てみると、そこにはずぶ濡れの美女ふたりが……という展開に。

もし女の「ファニーゲーム」があるとするなら、こういう感じかなという話の始まり方です。キアヌ・リーブス演じるお父さんは、愛する家族は裏切れず、誘惑になんとか打ち克とうとしますが、いかんせん超攻撃型ハニートラップです。あえなくパコってしまいます。魅惑の甘い夜が明けると、女たちは本性を現します。たった1回の逢瀬が、彼の人生を破滅に追い込むのです。

全編、キアヌ・リーブスの可愛い魅力がさく裂しています。本作のキアヌは「マトリックス」や「ジョン・ウィッグ」とは打って変わり“可愛い”のです。画面の中で彼に起こることは気の毒でしかたないのですが、その表情、しぐさがあまりにも可愛く、おかしくてしかたがない。終始笑いっぱなしでした。キアヌがひどい目に合えば会うほど、笑ってしまうのです。それにしても、なんで女は1回やったぐらいでこんな態度が変わるんだ!

キアヌで笑いっぱなしになるのは、ロスの脚本によるところも大きい。ぼくは彼の作品にまぶされる「悪意」が大好きなのですが、本作では旧来の彼の映画での残虐な描写は鳴りを潜め、悪く言えば「ぬるい」です。けれど、そうであるがゆえに、前段のキアヌの可愛さに安心して楽しめる「笑える悪意」に仕上がっているのです。不倫がいろいろ世間を騒がせている昨今ですが、フィクションの中のそれぐらい笑って楽しみたいものです。