いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】守護神

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のちにスーパーマンの父となるケビン・コスナーと、のちにスティーブ・ジョブズとなるアシュトン・カッチャーが、沿岸警備隊員を演じた海難レスキューものです。

コスナーが演じるのは生きる伝説となったレスキュー隊員。いままでに何百人もの命を救ってきた彼ですが、任務中に負傷したのを機に、訓練学校へ教官として出向するのを命じられます。彼がその学校で出会ったのが、カッチャーの演じる鼻っ柱の強い生徒で、ふたりは衝突します。

ここから通常なら、カッチャーが厳しいシゴキに耐えて人間的に成長していく姿に、コスナーも「中々骨のあるやつじゃねーか」と考えをあらため、ふたりは和解する……となっていくはずですが、この映画はそうはならない。よくよく見ると、ふたりは端からそんなに対立はしていないのです。だからドラマも生まれ得ない。

ふたりだけにとどまりません。そもそもこの映画の訓練はぜんぜん辛そうに見えない。映画の訓練シーンといえば、どれだけ厳しいかを強調するものです。近年では、シールズの訓練風景を描いたイーストウッドの「アメリカン・スナイパー」なんかが記憶にあたらしいですが、この「守護神」におけるそれはまれにみるぬるさ。心地よい温水プール並みです。

規律もなってない。夜な夜な生徒たちでパーティーに繰り出し抜き打ち訓練をすっぽかしてもお咎めなし。女の家で朝寝坊しても水浴び程度のバツを受けるだけ。甘やかしすぎです。こんなのだったら、こないだテレビ番組で見た競艇学校の方がよっぽど厳しそうです。

で、カッチャーは無事に学校を卒業し、ふたりは同じアラスカの部署で働き始めますが、ここで唐突にコスナーに負傷した事故のトラウマがあったことが、雑な演出で表現されます。そう、この映画の演出といえば、「取って付けたように」がキーワード。カッチャーの彼女の件も、コスナーのワイフの件も、みな取って付けたように回収されていきます。


観終わったあとに何も残らない。これはなんだったんだと置いてけぼりをくらう鑑賞者の心、救助失敗!