いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【映画評】ロブスター

結婚して子種を残したわけでなく、かといって仕事で素晴らしい成果を挙げたわけでもないぼくを「家畜以下」だとののしる方々も一定数いらっしゃると思いますが、ついにそれを映像として見せられ、衝撃を受ける日が来ようとは。

本作「ロブスター」は、人が誰かとつがい(恋人、あるいは配偶者)になることを強制された近未来を描いた映画です。独り身のままだとどうなるのか。強制収容所(といってもホテルのように快適)に住まわされ、一定期間内にカップルを作らなければ動物にされてしまいます。映画タイトルのロブスターは、主人公がなることを望んだ動物です。理由は長生きできるからだそうです。

社会がどんなに多様化し、人が寛容になっても、未だに恋愛至上主義(いい年こいた人は恋愛する"べき"ものだ)、あるいは結婚至上主義(いい年こいた大人は結婚すべきものだ)は根強くあります。人は誰でも、異性であろうと同性であろうといつかは好きな人と一緒になるものだ、という発想ですね。

本作は、そうした発想がいかに気味が悪いものかを、ブラックユーモアと、いくらかの残酷な描写を織り交ぜて描き出します(動物好きの人はちょっと覚悟して観たほうがいいかもしれません)。SFとはいっても、ハイセンスなデザインの機械類やアンドロイドなどは一切出てきません。ストーリーは異なりますが、「ガタカ」が好きな人にはおすすめ。

しかし、本作がターゲットにするのは、恋愛至上主義、結婚至上主義のみではありません。後半に入ると、今度は主人公が正反対の思想の集団(レジスタンス?)に身をおくことになります。それは、誰にも頼ることのない個別主義を貫くことが義務付けられた集団です(といっても徒党を組んでいる時点で矛盾している気がしますが…)。その集団は一見カッコイイのですが、ストーリーが進むに連れ、観客は彼らが前段の恋愛至上主義や結婚至上主義と裏表の関係にあることを目撃するのです。

ぼくら独身者の多くが、結婚を前にして煮え切らない態度を取ってしまうのは、きっと、1人で生きていくことの自由と、1人で生きていくことの寂しさのゆらぎの中にあるからでしょう。

結局、ぼくらはどうすればいいのか。「結婚したい」と思うことがあれば、反対に「独りが気楽だ」と思うこともある。この映画を観ていると、好きだったら付き合う、そうでなくなったら離れる、みたいにフレキシブルにやらせていただきたいものですが……。

ちなみに、ぼくを動物にするなら豚にしてください。お願いします。