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世界中から凶暴な死刑囚10人が絶海の孤島に集められる。仕組んだのはテレビプロデューサー、ブレッケルで、彼はその10人に生き残れるたったひとりの座をかけての殺し合いをさせ、その模様を全世界に向けてネットで生中継する、というのです。
もう、何作から借りてきたんだと数えてみたくなるような設定ですが、童心を忘れないどころか取り憑かれたようなおじさんが、きゃっきゃしそうなアクション映画に仕上がっています。
主演のストーン・コールド・スティーブ・オースチンは、WWEに食指が動かなかったぼくでも名前ぐらいは知っている同団体の元スーパースターで、現俳優です。のちにスタローンの「エクスペンダブルズ」にも出演を果たします。
オースチンが演じるコンラッドは、3人を殺害した罪(これも後々わけあってのことだとわかります)でエルサルバドルで収監されています。そんなコンラッドに、急きょ、監獄島への誘いが舞い込む。中継番組の開始前に、用意していた死刑囚10人のうち1人が欠けてしまったのです。
ブレッケルはクズ人間ですが、そのクズっぷりはテレビプロデューサーという役割を通じて遺憾なく発揮されます。
まず彼は、全世界のネット視聴者を集めたいがために、増員する死刑囚はアラブ人だと部下に厳命します。
結果、やってきたのは白人のアメリカ人のコンラッドだったのですが、ブレッケルは彼の風貌(マッチョで丸坊主の白人)が気に入ったようで、「世界中の反米主義者にとってこいつは格好の悪役になる」として「アーカンソー州、爆弾犯、差別主義者でKKKのメンバー」という全く別のプロフィールを上書きしてしまうのです。
この場面、もちろんフィクションではありますが、「テレビはヒンシュクを買おうが主義主張に反しようが、耳目を集めりゃ勝ちなのよ」という極めてゲスな価値観を端的に現しているといえます。
勝手に差別主義者の汚名を着せられたコンラッドの境遇は、まさにオースチンの前職であるプロレスそのものです。あくまでWikipediaの情報ですが、彼はWWE移籍当初は人気が出ず、ギミック(プロレスラーのキャラクター)を変えることによって一躍ブレークしたそうです。
しかし、この作品では当初こそ「コンラッド=悪役のギミックを指示されたプロレスラー」という構図ですが、オースチンは「その先」を行く。コンラッドはその役柄を引き受けることを拒否し、さらにこの「監獄島」という番組のルールそのものも拒否しようとするのです。
最終的に、番組プロデューサーはテレビではご法度といえる「ヤラセ」を犯し、コンラッドの軍門に下ります。コンラッドは自身の手でプロレスの筋書きを書き換え、自由を手に入れるのです。
このあたり、オースチンに詳しいファンならばメチャクチャ熱い感涙もののエピソードでもって論を補強することができるのでしょう。しかし、何分ぼくは門外漢なもんでして、当て推量でここまできました。現場からは以上です。