いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【書評】「ストーカー」は何を考えているか / 小早川明子

「ストーカー」という言葉が一般的に認知されてから、すでに10年以上がたっているが、いまだにそうした事件がワイドショーをにぎわすことが後を絶たない。本書は、ストーカーを含むハラスメント相談に応じるNPO法人の理事長を務め、いままで500人以上のストーキング加害者(!!!)と向き合ってきたという著者による一冊だ。

タイトルからだと、ストーカーの精神構造を解説してくれるような印象だ。実際、精神医療の知見を援用してのそうした内容の箇所もあるのだが、基本的には、著者自身が体験した豊富な事例を元にしてストーカー事件に巻き込まれたときの対処法を記すものとなっている。

著者のもとに舞い込む事案の8割は「破恋型」なのだそうだ。けれど、読んでいると、別れた元恋人に接近してくるストーカーの彼彼女らの様子は、復縁を求めて必死な失恋者というより、どちらかというと「債権者」「被害者」に近い。彼らは、どちらかというと自分が失った何かを取り返そうと必死なのである。その何かは、お金、時間といったわかりやすいものもあれば、よくわからないものもあるのだけれど。

本書では、著者自身が関わっていながら防げなかった逗子の例の事件の顛末も明かされている。ただ、テレビでニュースになるような殺人事件にまで発展するケースは稀なようだ。裏を返せば、「自分ではストーカーではない」と思っているストーカーもいるわけだから、復縁に向けて頑張っている方々はゆめゆめご注意されたい。


こうした事件ではよく警察の対応が後手にまわり、国民から叩かれる場面に出くわす。著者によると、遅れてしまう原因には、ストーカーが刑事上の不法行為なのか、それとも民事上のトラブルなのか、その線引の難しさがあるという。そして民事上のトラブルなら、強大な権力をもつ警察は介入を自戒してしまうそうなのだ。

そうした警察の判断も否定できないところがあり、ストーカー被害者と警察の間にたつメディエーターとして、著者のような存在がもっと増えていくことが必要なのではないかと思う。

最後に、ストーカー問題というより、恋愛一般に通じる優れた文章があったので、ここで紹介しておこう。

 そもそも「愛する」という動詞が混乱のもとで、「愛」は「する」ものではなく、「空腹」や「貧しさ」と同様、状態を表す言葉です。どうしても愛という言葉を使いたいなら、男性であれば「僕は今、あなたに愛を感じています」が正確だと思います。
 季節が移り変わるように、人の気持ちは刻々と移ろいます。「残念だけど、今はもう君に愛を感じない」と言うのは正直です。丁寧に言えば刺激も少ないはずです。

p.68

最後の一文は果たして本当かわからないが、それでも、ストーカーされそうな人、ストーカーになりそうな人双方が、一度は目を通しておいてよい文章ではないだろうか。