いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】オール・チアリーダーズ・ダイ

自由の国と謳われるアメリカのハイスクールにだって実はスクールカーストがある。その頂点を極めるのがアメフト部を代表とするジョックと、その相方となるチアリーダーたちクイーンビーだ。
仮面ライダー』シリーズで描かれたこともあって日本でも人口膾炙しつつある構造だが、本作『オール・チアリーダーズ・ダイ』は、タイトルが連想させるような作り手側がクインビーへのミソジニーを燃やす映画かというと、ちょっとちがう。
ある事故で一度は死んだチアリーダーたちが蘇り、彼女らと蜜月の関係にあったはずのアメフト部の面々の大虐殺を敢行する、いま自分で書いていてもなんちゅー映画を早起きして見てきたんだという思いに駆られる、ぶっ飛んだ一作。


元々は「ナード」(スクールカーストの底辺層)だったはずのカメラ女のマディは、ナンバー1チアリーダーのアレクシスが事故死した3ヶ月後、ある思いを秘めてチア部に入部する。彼女の狙いはチア部とアメフト部の分裂で、その狙いがまんまと上手く行きかけた矢先、アメフト部のエースのテリーの凶行によって彼女は他のチアリーダーとどもに事故死してしまう!
そこに駆け付けたのがマディの元親友の自称魔女レーナで、悲嘆にくれる彼女がまさかまさかの黒魔術を発揮してしまい、マディらが蘇る。


日本でも(本人は依然罪状を否認してはいるが)内柴正人を筆頭とする脳筋絶倫性犯罪者らの存在が、スポーツが「健全なる精神」を担保しないということは知らしめたが、本作からわかるのはアメリカにも「体育会系」というものを批判的にみる視点があった、ということだ。
いや、この言い方は適切ではない。今までにだってアメリカの映画ではジョックは悪者で、最後にはギャフンと言わされてきたのだ。
ただ、それらにかけられていた情熱には、学生時代に辛酸をなめた映画製作者らの私怨が混じっており、同時にクイーンビーらも憎悪の対象だったはずだ。
けれどこの映画では、先述したように「体育会系」と蜜月の関係にあったチアリーダーたちの視点から、彼ら「体育会系」エリートたちの過剰な性衝動をはっきりと暴力として描き切っている。
古典的ではあるが、終盤にはあるレイプ被害の告白と、ナイフでのある女の殺害シーンをカットバックで交互に見せていく手法が使われる。ナイフが何を象徴しているかは、誰がどうみても明らかだろう。


評価がわかれると思うのは、その外見のわりにややマトモすぎたかなぁというところ。蘇ったチアリーダーたちはことあるごとに身体が発光し始め、その様が腰痛の塗り薬のCMの患部みたいで個人的には笑えたが、基本的には真っ当に展開するファンタジー映画である。
また、超現実的な展開についての説明も、ちょっと不十分な気がする。
けれど、ジョックとクイーンビーという頭軽そうな見た目によらず、結構考えさせる内容であった。