- 作者: 海野つなみ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/06/13
- メディア: コミック
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『逃げるは恥だが役に立つ』は、「愛し合う2人の結婚」とはちょっとちがう、不思議な夫婦生活を描く、講談社『KISS』上で連載中のマンガ。タイトルはハンガリーのことわざだとか。
心理学の大学院まで進んだが、卒業後に就職浪人していたヒロイン・森山みくりは、ひょんなきっかけから家事代行業を始め、あれよあれよという間に雇用主と表向きには夫婦、本当は雇用主/雇用者という事実婚の「仮面夫婦」を営むことに。
お相手は、理系インテリ×草食系×こじらせ×高齢(といっても36歳)童貞と、なんぼほど要素かけ合わせとんねんという津崎平匡(ひらまさ)。
愛し合ってるわけでないのだが、妙齢の男女の同居生活であって、そりゃヤるっしょ!? どうせヤるようになるっしょ!? とゲスの勘ぐりをしてしまうが、そこはこじらせ高齢童貞の平匡くん、めんどくささのレベルがちがいます。
「好きになってしまう」ことを恐れてあえてみくりに壁を作ったり、ライバルっぽいヤツを見つけて即時撤退し始めたりするあたり、自称プロ独身の彼だが、永世プロ童貞9段の資格も多いにありそう。
そうしたぎこちない2人を通してこのマンガが描くのは、夫婦という関係がいったいどういったものなのかだ。
結婚は愛だけあればいいってわけじゃなく、二人三脚で運営していかなかければならない経済活動なのだということを、本作は再確認させてくれる。
院卒のくるみだが、平匡の身の回りの世話をする仕事=結婚生活において謎の高スペックぶりを発揮し、就活で傷ついた自尊心を回復させていく。「専業主婦」がそんな風に描かれるのはなかなか珍しいではないか。
回り道とはなっているものの、そうした経済活動共同体をともに運営する間柄がために、2人の間にも特別な感情が芽生え始めていく。
好きだから結婚したのではなく、結婚しているうちに好きになっていく、いわば「家庭内職場恋愛」というわけのわからん状況なのだけれど、ここでも平匡くん、牛歩につぐ牛歩である。まぁ、そういうぎこちなさはお約束で楽しいのだけれど。
4巻まで既刊で、一見2人は上手くいきかけているのだけれど、ちょっとした嵐が巻き起こりそうな気配もあり、この先どうなるのかは気になる一作である。